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信長の参謀  作者: 長崎くすお
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第6話 織田家最強の武将現る

史実をベースにしたファンタジー作品です。

 彩乃が待つ場所に着くと、そこは体育館くらいの広さの空き地だった。

 その中央に、彩乃ともじゃもじゃ髭が特徴の大男が立っていた。


「おっそ~い。待ちくたびれたぞ」


 どれくらい待っていたのか分からないが、彩乃が不機嫌そうな口調で言ってきた。


「信長様との話が長引き、遅くなりました。申し訳ない」


 彩乃に詫びを言い終わると同時に、彩乃の横に居た大男が喋り出す。


「お主が未来から来たという龍二か? ワシは、柴田勝家。暇だったから、ワシも手伝ってやろう」


 ――柴田勝家! 自害するときに内臓をぶちまけたという伝説の武将か!

 織田家最強の武将だけあって、覇気が凄まじい。

 そして、筋肉が半端ない。片手でリンゴを余裕で潰せそうだな。


「今日からしばらくの間、ご指導よろしくお願いします」


 彩乃と二人っきりの楽しい日々が始まると思ってたのに……考えが甘かったか。


「信長様に剣術を教えろと言われたが、武器は刀以外に、薙刀(なぎなた)・弓・鉄砲・槍がある。龍二はどの武器を使いたいんだ?」


 ――俺は即答で答える。


「実は、使いたい武器は決めています。それは、小太刀(こだち)です!」


 ――俺はドヤ顔で言い放った。


「「小太刀?」」


 と言い、彩乃と勝家が笑った。


「何がそんなに、可笑(おか)しいのですか?」


 不思議に思った俺は勝家に尋ねた。


「小太刀はな、腕力がない奴。もしくは、女が使う武器だぞ」


 勝家がこの時代で小太刀を使用する者が、どんな人物なのか教えてくれた。


「わたしは小太刀を使っていますが、何か?」

「そう突っかかってくるな。彩乃は女だろ」


 勝家が彩乃をなだめる。


「冗談ですよ」

「彩乃は女だから問題ないが、若い男が小太刀を使う何て……聞いたことも見たこともないぞ」

「小太刀は小太刀でも、俺が目指すのは二刀流です」

「……二刀流?」

「はい。小太刀は機動力に優れているし守りながら戦えるので、攻撃は最大の防御と考える俺にとって相性の良い武器だと確信しています。それに、今から三百年後の未来では御庭番の頭目が小太刀の二刀流の使い手で、かなり強かった人がいました。なので、小太刀でも問題ないと思っています」


 御庭番の頭目は漫画のキャラだから、実在した人物ではないんだけどね。


「ガッハッハ。自分の性格を把握して決めておったか。ならば、大薙刀使いのワシに出番はないな。あとは、小太刀使いの彩乃に任せよう。あぁ、そうだ! 龍二は彩乃に惚れているらしいが、子持ちだからな。ガッハッハッハ」


 そう言って、勝家は立ち去った。

 何か分からんが、勝家が去ったので彩乃と二人になれた。ラッキー!

 ――だが、彩乃が子持ちだと?

 つまり、結婚しているってことか……。


「あのぉ、さっき勝家殿が言っていましたが……彩乃さんは結婚しているんですか?」


 俺は、恐る恐る聞いてみた。


「夫が戦死してしまったから、正確には結婚していただな。子供だが、三歳の娘がいる」


 フハハハ。俺はバツイチ子持ちなどでは引かん。

 正確には、夫と死別だからバツイチではないがな。


「夫が居ないなら、これからも彩乃さんのことを想ってて良いってことですよね? 安心しました」

「うっとうしい。好きにしろ。話を戻すが、小太刀を使いたいとは変わっているな。しかも、二刀流とは!」

「俺の居た時代では、両手と口に刀を加えて戦う三刀流の剣士がいるんですよ。それに比べたら、二刀流なんて普通ですよ」


 三刀流の剣士も、漫画のキャラなんだけどね。


「まずは、その他人行儀な喋り方はやめろ。気持ち悪い。これからは、タメ語で構わん」

「一応、織田家の先輩なので敬語を使っていたが、必要ないならお言葉に甘えてタメ語で話すよ」

「そうしてくれ」

「ちなみに、勝家殿が織田家で一番強いのか?」

「ああ、そうだ。次に強いのが、利家殿か可成殿だな」


 この日から年が明けるまで、彩乃との辛く楽しい修行の日々が始まった。

 午前は、素振りや筋トレなどの基礎練習。午後からは、彩乃とたまに来る勝家と可成との実戦形式の戦闘。

 勝家と可成が戦闘訓練に来てくれたのは、薙刀や槍との戦闘にも慣れておくためである。

 ちなみに、勝家が薙刀使いで、可成が槍使いだ。



     ◇◇◇



 ――半年後、俺の体はクリロナにも匹敵するほどの肉体になっていた。

 仕上がった肉体美を彩乃に見せたくなった俺はおもむろに上着を脱ぎ、彩乃に見せつける。


「どーよ、この半年の修行でバキバキの体になった俺の素晴らしい肉体美は。惚れたか? 惚れただろ?」

「ハァ―、惚れねぇよ。だが、真面目に修行したことは認めてやる。少し待ってろ」


 そう言い残し、彩乃はどこかに行った。

 しばらく待っていると、彩乃が馬を連れて戻ってきた。


「その馬は?」

「騎馬して戦うこともある。だから、馬の扱いも練習しておいて損はない」

「なるほどね。了解した!」

「早速だが、馬に(またが)ってみろ」 


 俺が馬に跨ると急に『ヒヒーン』と鳴き、暴れ出した馬に振り落とされてしまった。


「いやぁ、失敗失敗。ハードラックと(ダンス)っちまったぜ」

「はぁどらっく? だんす?」

「俺が居た時代では、落馬のことをハードラックとダンスしちまったって言うんだよ」


 正確には、事故ったときに言うんだけどね。

 この日から基礎練習と実戦練習に加えて、馬術の練習もすることになった。



     ◇◇◇



 それから月日は流れ、一週間後に新年を迎えようとしていた某日。

 俺は義元から、年明けに今川館に招待されていることを伝えるために、信長の元へ向かった。

 

「信長様、大事なお話が」

「何だ?」

「今川義元から、年が明けたら蹴鞠(けまり)の大会を開くからと招待されています。なので、年明けに今川館に行きたいのですが? 行って来てもいいですか?」


 少し間が空き、信長が返事する。


「……来年の戦に向けての下準備か?」

「はい」

「分かった。ただし、条件がある。彩乃も連れていけ」

「了解しました。あと、お願いがあります」


 よっしゃー! 彩乃と旅行ができる。嬉し過ぎて、泣きそうだ。


「何だ? 申してみよ」

「義元に手土産として渡すために、清酒を一本用意してほしいんですが?」

「分かった。用意しておく」


 信長に報告してから一週間が経ち、俺と彩乃は義元がいる今川館に向けて旅立った。

ハードラックとは、「特攻の拓」に登場する鰐淵さんの名言です。

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