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信長の参謀  作者: 長崎くすお
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第5話 桶狭間の戦いへの布石

史実をベースにしたファンタジー作品です。

「今日からここが俺の家か」 


 用意された家は四部屋が連なる長屋で、俺の部屋は一番左端だった。

 部屋の広さは、六畳くらいの板張り。あとは台所があるだけなので、今でいう風呂とトイレなしの1Kって感じの間取りだ。

 この様な長屋が何棟もあり、兵士たちはここに住んでいるらしい。

 現代で言うところの寮みたいな感じだ。



     ◇◇◇



 翌日、俺は信長に会うために清洲城に向かった。

 清洲城に着くと俺は門番に挨拶をし、城内に入る。

 信長が待つ部屋の前に着くと、


「龍二です。失礼します」


 と、挨拶をして部屋に入る。

 すると、信長が質問をしてきた。


「昨日言っていた内密の話とは何だ?」

「まず、お伝えしときたいことがあります」

「何だ?」

「はい。未来から来たので知っている歴史を駆使し、信長様の天下統一を手伝うと言いましたが、俺が知っている歴史と同じなのかは現時点では分かりません。なので、万が一違っていたら力になることが出来ないと思います」

「ハッハッハ。何だそんなことか。確かに龍二の知識に期待していないと言ったら噓になる。が、機能も言った通りまだ完全に信じているわけではないから、心配するな」


 そうだった。俺は今のところ自称未来人だった。


「それは良かったです。少し肩の荷が下りました。では本題に入ります」

「本題? さっきの話が本題ではないのか?」

「はい。信長様だけにお伝えしときたいことがあったので、こういう機会を作ってもらいました」

「で、その本題とは?」

「俺の知っている歴史と同じだった場合、来年の五月に今川義元が二万五千もの大群を率いて尾張に侵攻してきます」


 俺は一五六〇(1560)年に起こる桶狭間の戦いのことを信長に伝えた。


「――何? 義元が二万五千の大群で攻めて来るだと?」


 さすがの信長も、驚いた表情をしている。


「はい。二万五千です。ですが、安心してください。太原雪斎(たいげんせっさい)が居なくなった今川軍など有象無象(うぞうむぞう)の集まりです。なので、数的不利でも勝てます」

「確かに、太原雪斎が居なくなったのはでかい。だが、義元は駿()()()()()の異名を持つ者。決して楽な相手ではないぞ」


 駿河の与一? 那須与一が語源か?

 だとしたら、弓の名手ってことか?


「すみません。駿河の与一とは何です?」

「人並外れた弓の使い手に(あた)えられる異名だ」

「なるほど。そんなものがあるんですね。ちなみに、織田家には与一の異名を持つ者はいないのですか?」

「残念ながら織田家にはいない」

「そうなんですか。では、話を戻します。今川軍との戦を少しでも有利に進めるための布石を打っておきました」

「布石?」


 俺は尾張に来る前のことを信長に話し出す。



     ◇◇◇


[龍二が青木ヶ原村を旅立つ日に遡る]



 俺は青木ヶ原村を出てすぐに尾張に向かわず、今川義元に会いに行くことにした。

 来年、桶狭間の戦いが起こるかもしれないから、先手を打っておくためである。

 だが、今川義元は大大名。簡単に会うことが出来ない。

 そこで、俺は必死に考えた。


「今川家と言えば、蹴鞠(けまり)が好きで有名だったよな」


 学生時代サッカー部だったのが、功を奏したぜ。

 ロナウジーニョばりのリフティングを披露すれば、間違いなく喜ばれるに違いない。よし、この作戦で行こう。


 義元の居城今川(やかた)に着くと、城門の兵士に俺はドヤ顔で言い放った。


蹴鞠(けまり)の天才である鬼塚龍二が義元様にお会いしたく、尋ねて来たと伝えてください」

「……変な奴だな。一応伝えてやるが、お会いしてくれるかは分からんぞ」


 城門で待っていると、使用人がやってきた。


「義元様がお会いしてくれるから、付いて来い」


 そう言われて使用人に付いて行くと、義元が待っていた。


「麻呂が義元でおじゃる。隣におるのが、息子の氏真(うじざね)じゃ。して、そちが蹴鞠の天才とか抜かしておる鬼塚龍二とやらか? それにしても、おかしな格好をしておるな」

「はい。蹴鞠の天才です。ぜひ、義元様に技を見てもらいたく、肥前からやってきました。服装は南蛮人から買ったものなので、珍しいかもしれませんね」


 俺は当たり障りのない嘘をついて、何とか誤魔化した。


「そこまで言うなら鞠を持ってこさせるので、やってみるでおじゃる」


 へぇ~、これが鞠か! ハンドボールくらいの大きさなんだな。初めて知ったぜ。

 大口を叩いたのは良いが、蹴鞠のルールが分からん。とりあえず、リフティングを見せて誤魔化そう。


「では、やらせてもらいます」


 そう言って、リフティングを披露した。


「蹴鞠とは違うが、なかなか上手いではないか」


 やっぱり、リフティングとは違ったか……。


「これは南蛮人から教わったリフティングというもので、南蛮式の蹴鞠です。リフティングの技と言っても分かってもらえないと思い、蹴鞠と言ってしまいました。すみません」


 強引だったが、何とか誤魔化せたかな。


「南蛮式の蹴鞠と申したか。なかなかの技であった。嘘をついたことは特別に見逃してやるでおじゃる。他にも鞠を使った南蛮式の遊びはあるのか?」

「他にですか? あっ、セパタクローというものもあります」


 俺は今川親子にセパタクローを説明した。

 義元と氏真に何とか気に入られた俺は、一週間ほど今川家でセパタクローの指導をするように頼まれた。


「では、一週間という短い期間ですが、よろしくお願いいたします」


 ラッキー! 義元から繋がりを持ってくれるとは。

 当初予定していたリフティング作戦から、セパタクローになったが成功だったな。

 しかも、滞在期間中に住む家を提供されたし。至れり尽くせりだぜ。

 約束通り、明日からリフティングの指導をやるか。


 一日目、二日目と過ぎ、あっという間に一週間が経ち、尾張に向かう日が来た。


「一週間という短い期間でしたが、お世話になりました」

「有意義な時間であったぞ。年明けに蹴鞠の大会をやるから、また来るでおじゃる」

「ありがとうございます。では、年明けに」


 俺は今川館を後にし、桶狭間の下見をしてから尾張に向かった。



     ◇◇◇


[現在に戻る]



 これまでの経緯を聞いた信長が口を開く。


「なるほどのぉ、義元と接触してから尾張に来たのか。なら、今川家からの間者の可能性もあるってことだよなぁ?」


 信長の顔が冗談っぽかったので、俺も冗談っぽく返す。


「やめてくださいよぉ」

「冗談だ。して、どうやって義元を討つつもりだ? 考えを言ってみろ」

「はい。桶狭間の地に良き場所があるので、そこに義元を誘い込み討つ算段です。具体的な策は決戦の日が近づいたときに申しますので、良策と思ったら採用してください」

「……ふむ、分かった。では、昨日言った通り、今日から彩乃のもとで剣術の鍛錬(たんれん)をして来い」

「そのことですが……彩乃さんは女性ですよね? 剣の腕が立つのですか?」

「ハッハッハッハ。彩乃は織田家の中で五本指に入る腕前だ。何も心配するな」

「分かりました。では、剣の鍛錬に行ってきます」


 信長は心配するなとは言っていたが、本当に大丈夫かな?

 疑問を抱きながら、俺は彩乃が待つ場所に向かった。

余談

今川義元のモデルは、戦国無双4みたいな外見をイメージして描いています。

どうしても、白塗り・お歯黒の公家風のイメージになっちゃうんですよね(笑)

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