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信長の参謀  作者: 長崎くすお
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第2話 中学時代の妄想が現実に

史実をベースにしたファンタジー作品です。

 鏡に映っている俺の顔にシミやシワもない。どう見ても、二十歳くらいの頃の姿になっている!


(……これは……俺だよな? いや、誰がどう考えても俺だ。どうなっている? 考えられるとしたら、空間の歪みを通り抜けたことが原因か?)

 

 顔を触ってみるとハリがある。やっぱり、紛れもなく若返っている。現実では起こりえないから、ここは日本に似た異世界で間違いなさそうだ。

 客間に案内された俺は村長に質問をする。


「変なことを聞くかもしれませんが、ここはどこ何でしょうか?」

駿河(するが)にある、青木ヶ原村というところですよ」


 駿河? 駿河って言えば、静岡県の昔の呼び名じゃないか!

 ――だとすると、ここは戦国時代なのか?


 俺は再び、村長に質問をする。


「駿河なら、領主は今川義元ですよね?」

「はい。今川義元様です」


 今川義元が生きているということは、桶狭間の戦いが起こる前の日本ってことだよな。となると、間違いなくこの世界は戦国時代みたいだ。

 異世界に来たのかと思っていたが、どうやら俺は戦国時代にタイムスリップしたみたいだな。


 俺はさらに質問を重ねる。


「つかぬことをお聞きしますが、今は何年でしょうか?」

「今は一五五九(1559)年ですね。見たことがない格好をしていますが、どちらのご出身で?」


 一五五九年? 俺の記憶が確かなら、桶狭間の戦いが起こったのは一五六〇(1560)年。ということは、桶狭間の戦いが起こる一年前の日本か!


肥前(ひぜん)です」


 俺は長崎出身なので、長崎の旧国名を答えた。


「肥前ですか? これは遠くからご苦労様です」

「清太から聞いたかもしれませんが、恥ずかしい話 無一文です。畑仕事など何でも手伝いますので、一週間くらいこの村に滞在させてはもらえないでしょうか?」

「そういうことでしたら、母屋から離れた場所に使っていない部屋があるので、そこをお貸ししましょう」


 そう言って村長が離れに案内してくれた。


「ありがとうございます。お言葉に甘えさせてもらいます」


 親切な村長で助かった。とりあえず、当面の生活は何とかなりそうだな。

 離れに入ってみると、八畳間で風呂とトイレなしのワンルームみたいな感じの部屋だった。

 当然だが、テレビやゲームなどの家電もない。


(ん! スマホ! そうだ、スマホは使えるのか?)


 急に状況が変わってバタバタしていたから、俺はスマホの存在を完全に忘れていた。

 ジーパンのポケットからスマホを取り出し、画面を確認する。


(予想通り、圏外か……。当たり前だが、ネットも使えん)


 通話やネットの機能は使えないが、写真や動画の撮影は役に立つかもしれない。

 ソーラー式のモバイルバッテリーがあるとはいえ、念のためにスマホの電源を切っておこう。


 スマホの電源を切ると同時に、『コンコン』と玄関のドアが鳴る。

 ドアを開けると清太が布団を持って立っていた。


「布団を持ってきたぞ」

「おお、助かる。ありがとう」


 村長が俺のために布団を用意してくれたらしく、清太が持って来てくれた。布団を俺に渡すと清太は母屋に帰って行った。


 夜も更け、腹が減った俺は晩飯を食べるためにお湯を沸かす。そのお湯で持参していたカップラーメンを食べることにした。

 これを食べると、残り三個になるのか……。

 カップラーメンはこの時代では絶対に手に入らんから、食べるのがもったいなくなるな。


 俺は晩飯を食べながら、中学時代に歴史好きの友達と他愛のない会話をしていたことを思い出す。

 その話とは、戦国時代にタイムスリップできたら『どの大名に仕える?』という妄想だ。その妄想が現実に起こってしまうとは……。


 当時は強いからという単純な理由で、上杉謙信か武田信玄に仕えると妄想していたっけな。何せ、あの織田信長も信玄と謙信にはビビっていたらしいし。

 本当なのかは、分からんが……。


 晩飯を食べ終わったし、そろそろ布団に入って今後の展望を考えるか。

 群雄割拠の戦国時代に来てしまったのだから、どうせなら、天下統一をしてみたいな。

 だが、歴史シミュレーションゲームみたいに上手く行くのか?


 ……待てよ。ゲームだと大名からのスタートだが、この世界では俺は大名ではない。ということは、天下統一するには大名になることから始めないといけないんでは?


 大名になるとは言ってみたものの……どうやったらなれるんだ?

 よく考えると、大名になるとか無理じゃないのか? ということは、天下統一はできないってことだよな……。


 いや待てよ。確か……豊臣秀吉は農民。斎藤道三は商人から大名になっているはず。なら、俺も大名になることが可能じゃないのか?

 可能性が全くないわけではないが、どう考えても限りなくゼロに近い。それに、大名になるにはかなりの年月が必要だろう。

 そこで、別の方法を模索する。


 ここで俺はバスケ漫画で『オレはチームの主役じゃなくていい』と言っていたキャラのことを思い出す!

 大名イコール主役と考えていたが、この考えが間違いか。

 別に俺が大名になって、天下統一を目指す必要性はないわけだ。


 ――なら、どうする?

 そんなの決まっている。大名の側近になって、天下統一の手助けをすればいい。これが最も可能性がある。


 そうなると、問題はどの大名を主君にするかだな!

 中学時代の妄想通り行くなら、上杉謙信か武田信玄か?


 ――だけど、この二人には仕えたくない。

 理由は簡単で、謙信が治める越後と信玄が治める信濃は豪雪地帯だから、寒いのが苦手な俺にはツライからだ。


 それと、寒い以外に懸念(けねん)がある。

 それは、豊臣秀吉以外の誰かが天下統一をしたら歴史が変わってしまうのではないか? という問題だ。


 あと、戦国の世は外人や外国の文化にも珍しい時代なので、理解がない大名に『未来から来た』と言えば、ペテン師扱いされて首を切り落とされる可能性もある。


 ――そうなると、可能性があるのは織田信長だけか!

 血筋や身分など気にせず、能力がある者を採用してたみたいだし。その証拠に、低い身分の秀吉やヤスケという黒人を家臣にしている。

 それに、南蛮文化にも寛容だったみたいだしな。

 そう考えると、未来から来たという与太話を真剣に聞いてくれそうな信長一択しかない!


 本能寺の変で信長が死んだあとは、天下人になる秀吉に鞍替えすれば問題なし。

 ヨシ! 今後の展望は大方決まった。寝るとするか。

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