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信長の参謀  作者: 長崎くすお
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第1話 現実逃避

史実をベースにしたファンタジー作品です。

 俺は金持ちになりたかった。そう、金持ちになりたかったんだ。一生遊んで暮らせるほどの金持ちに!

 と言っても、大金持ちになって豪遊三昧をしたかった訳ではない。

 ただ、一億五千万円ほどの大金が欲しかっただけなんだ。


 ――なぜ一億五千万円なのか?

 それは、四十三歳の俺が寿命を迎えるであろう九十歳前後まで生きるために必要な金額だからだ。

 これだけの貯金があれば、死ぬまで引きこもってゲーム三昧。さらに、漫画やアニメ観賞を好きなだけできる。


 そんな夢の生活を実現したくて、俺は貯蓄していた二千万円を元手に投資の世界に手を出した。いや、正確には投機か。

 ――結果は言うまでもなく、持ち金を溶かして終わる。

 まぁ、ありきたりの話だ。


 借金をした訳ではないが、全財産を失ったことにより俺は生きる希望を無くす。

 死にたい。そう思った俺は何となく自殺の名所である青木ヶ原樹海に向かった。

 ――だが、自殺をする気など毛頭ない。


 正確に言うと、自殺をする勇気がないと言ったほうが正しい。

 なので、遭難した場合に備えて、リュックの中に数日分の食糧や寝袋などのキャンプ道具を持参してきている。

 ――簡単に言うと、現実逃避だ。


 青木ヶ原樹海に到着した俺は車から降り、リュックを背負った。そして左手に方位磁針を持ち、準備万端で樹海の中に突入する。

 樹海の中は方位磁針が狂うから役に立たない。そう言われていたが、正常に機能している。


(やっぱり、間違った俗説だったか!)


 方位磁針が機能していることを確認した俺は樹海の中を突き進んで行く。

 しばらく樹海の中を歩いて行くと、遠目に空間が歪んでいる場所が見えた。


「ん! 何だあれは? 蜃気楼?」


 俺はその空間の歪みが気になり、近づいてみる。

 歪みに近づくと、ドアぐらいの大きさの空間が歪んでいた!

 よく見ると、真夏の暑い日にアスファルトの上が歪んで見える現象に近い感じだ。


「今は春だから暑くないし、何でここだけ歪んで見えるんだ?」


 嫌な予感はしたが好奇心には勝てず、俺は空間の歪みを通り抜けてみた――。



     ◇◇◇



「あれ、空間の歪みが消えている?」


 後ろを振り向くと不思議なことに、さっきまで存在していた空間の歪みは消えていた――。


「……ん! こんな所に岩なんかあったっけ?」


 ――辺りを見回した俺は異変に気付く! さっきまで居た場所と景色が微妙に違っていることに。

 違和感を覚えた俺は、急いで車を停めた場所に戻ることにした。


「確かこの辺に停めたはずだけど……」


 車を停車した場所に着くと、そこには車は無かった……。それどころか、駐車場や道路もない。ただの開けた場所に変わっていた。


(場所を間違えたか? いや、ここで間違いないはず。場所は合っている……はずなのに、風景が違う。どういうことだ?)


 頭を空っぽにするため俺は腕を組み、目をつぶる。そして深呼吸をし、冷静に考える。

 すると、ある仮説を思いつく。

 ――それは、異世界に転生したのかもしれないと!


 しかしここであることに気付く! 俺は死んではいないということに。

 ――つまり、これは異世界転生ではない。


(なら、異世界召喚か?)


 すぐさま辺りを見渡したが、召喚者が見当たらない。それどころか、人っ子一人いない。

 ということは、異世界召喚の可能性も低い……。


(あと考えられるのは……ゲームの世界とかに転移か?)


 どういう状況か分からんが、ここが異世界であることには違いないはず。だとしたら、チート能力か魔法が使えるかもしれない。


(チート能力や魔法は異世界漫画の定番だからな)


 俺は早速試してみる。

 右手を突き出し、火の玉をイメージしながら


「ファイヤーボール」


 と、詠唱してみたが……何も起こらなかった……。

 もっと中二病的発想で詠唱したほうがいいかもしれない。

 そう思った俺は、


「地獄の業火に焼かれよ。ヘルフレイム」


 と、詠唱してみた。 ――だが、何も起こらなかった……。


(もしかして、使用できる魔法が火の属性ではないのか?)


 そこで、別の属性を詠唱してみる。


「サンダーボルト、ウォーターカッター、ダイヤモンドダスト」


 適当に様々な属性の魔法の詠唱を唱えてみたが、何も起きなかった……。


(詠唱が違うのか? もしくは、魔法が存在しない世界か? 期待して損したぜ)


 魔法が使えないことを知った俺はため息をつき落胆する。

 その瞬間、木陰(こかげ)から十歳くらいの少年が俺を見つめていることに気づく!


(いつから見られていた? 原住民か?)


 見た感じ害はなさそうなので、俺は少年と話してみることにした。


「っや、やぁ。いつから見ていたのかな?」

「ふぁいやぼーるって、叫んでいるところから」


 少年が笑うのをこらえながら答えているのが分かり、俺は顔を赤らめ照れる。

 穴があったら入りたいとは、このことだな……。

 そんなことにより、言葉が通じる。ということは……ここは日本なのか?

 この少年から情報を得るか。


「少年。魔法とか使えたりする?」

「まほう? 何それ? あと、オイラの名前は少年じゃなく清太(せいた)だ」

「清太っていうのか! 俺は龍二。よろしく」

「……よろしく」


 清太の発言で、この世界に魔法がないことが分かった。

 魔法がないなら、特殊能力があるのかもしれない。試してみるか。


「清太、俺の目を見くれないか?」

「……分かった」


 清太は不思議そうに思いながらも言われた通り、俺の目を見つめる。


「鬼塚龍二が命じる、三回回ってワンと言え」

「何言ってんだ。おめぇ」


 ギアスみたいな能力もなしか……。

 そういえば、特殊能力を与えてくれる神様や女神さまに会っていないから当然か。


「何でもない、気にするな。そんなことより、清太はどこから来たんだ?」

「青木ヶ原村ってところからだけど……」

「……青木ヶ原村? すまないが、ついて行ってもいいか?」


 青木ヶ原村ってことは……ここは日本で間違いなそうだな。富士山も見えるし。


「いいけど。おかしな格好してるけど、龍二は旅人なのか?」


 ――おかしな格好?

 ジーパンにTシャツだから別におかしな格好じゃないと思うけど、俺はファッションセンスが無いからなぁ。

 まぁ、人それぞれ服装の好みは違うからしょうがない。

 そんなことより、面倒なことにならないよう旅人ってことにしておくか。


「そうだよ、各地を旅しながら回っている」


 他愛のない話をしながら清太について行くと、昔の日本の農村みたいな感じの村が見えてきた。


「ここが青木ヶ原村?」

「そうだよ。ここが青木ヶ原村だ」


 この世界の知識がない俺は青木ヶ原村で情報収集をすることにした。

 情報収集の前に、お金と住むところを確保しなければいけない事に気づいた俺はダメもとで清太に相談してみる。

 すると、村長に会わせてもらえることになった。


「ここがオイラの家だよ」


 ――マジで?

 清太が立ち止まり指をさした家は、この村で一番大きな家だった。

 からかわれていると思った俺は清太に質問する。


「清太。村長に会わせてくれるんじゃなかったのか?」

「村長は、オイラの爺ちゃんだ」


 なるほど。そういうことか!

 俺が納得している間に清太は家に入り、村長を連れてきてくれた。


「清太。こちらの方は?」

「森で出会った旅人だよ。お金がなくて困ってるんだって」

「それはお困りのようで。とりあえず、お入りなさい」

「鬼塚龍二と言います。失礼します」


 俺は自己紹介をして、村長宅に上がらせてもらった。


(な、なんだ、これは! ――どうなっている?)


 玄関に置いてある鏡に映った自分の姿を見て、俺は驚愕(きょうがく)した!

ギアスとは『コードギアス』で使用される能力です。

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