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信長の参謀  作者: 長崎くすお
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ー桶狭間の戦いー(森可成視点)

別の戦場で戦っている織田軍の森可成視点です。

「殿ぉ。今川義元が二万五千もの大群を率いて、尾張に侵攻して来ました。どうしますぅ?」


 今川軍が想像以上の数で侵攻して来たので、俺っちは慌てた表情で信長様に報告した。

 それに対し、信長様は冷静な口調で俺っちに答える。


「やっと、動いて来たか。可成よ、そう慌てるな。義元が侵攻して来ることは分かっていたことだ」

「いやぁ、確かに数を聞いて少し焦りましたが、言うほどビビってないですよ」

「ハッハッハ! さすがは可成! 頼もしいな。して状況は?」

「今川軍は沓掛(くつかけ)城を目指し、行軍していると思います」

「思った通り沓掛城を起点に攻めて来るか。想定通りだ。可成よ。いつでも出陣できるよう挙兵の準備をしておけ」

「迎え撃つんですね? りょ~かい!」



     ◇◇◇



 俺っちが信長様に挙兵の準備するように言われてから二日後、今川軍が尾張に向けて進軍を開始したという報告が入った。

 その一報を聞いた武将たちが清洲城に集結し、軍議を始める。


「皆集まったな。それでは策を伝える――」


 俺っちは二千の兵を率いて、高根山麓に布陣するように信長様に言われた。

 で、その信長様は五百の兵を率いて義元を奇襲するらしい!

 つまり、俺っちは今川軍を誘い出す陽動部隊だ。


 俺っちが早々に敗戦すれば奇襲作戦は失敗に終わり、織田家が負ける。すなわち、織田家の滅亡を意味する。

 よって、信長様が義元を討ち取るまで今川軍を引き付けておかなければならない。この戦の勝敗を分ける重要な任務だ!



    ◇◇◇



 翌日、今川軍を迎え撃つべく、織田軍は熱田神宮に集結した。

 戦勝祈願が済むと、俺っちは二千の兵を率いて高根山麓に向かう。

 高根山麓に到着すると、横陣の陣形を敷き、今川軍を待った。


「可成様。今川軍六千がこちらに向かって進軍中。大将は松井宗信です」


 布陣して一刻が経過しようとしたとき、物見から報告が入った。

 それと同時に、遠目に砂煙が上がっているのを発見。


「やぁっと、来やがった。待ちくたびれたゼ」

「可成殿。何を悠長(ゆうちょう)に構えておる」


 今川軍を余裕の態度で待っていた俺っちとは違い、ツネ(池田恒興)は焦っていた。

 それもそのはず、今川軍はこちらの三倍の数の六千で来たからだ。


「ツネェ。たかが三倍の兵力差ごときでビビるなよぉ。一人当たり三人やれば何も問題ないだろ?」

「戦は算術とは違うというのに。全く」


 俺っちの発言に、ツネは呆れていた。


「ツネ。お喋りはここまでだ。今川軍が陣を敷きだしたぞ」

「予想通り、鶴翼(かくよく)の陣みたいですね」

「あぁ。そろそろツネも持ち場につけ」

「はい」


 今川軍は鶴翼の陣形を敷き、右翼と左翼を前進させてきた。

 お互いの両翼の距離が近づくと戦が始まった。


「右翼と左翼は持ちこたえてくれますかね?」

「両翼は、ツネとナリ(佐々成政)が指揮を執っているから大丈夫!」


 側近が心配そうに尋ねてきたので、俺っちは何も問題ないと安心させる。

 ――だが、兵力差は三倍。

 時間の経過に伴い、徐々に押し込まれてきた。


「皆の者。信長様が義元を討つまで持ちこたえるのだ――」


 俺っちは味方を鼓舞する。

 ――だが、今川軍を押し返せずにいた。


「……このままでは、まずいな。どうする?」


 さすがの俺っちも、焦ってきた。

 打開策を考えていたそのとき、今川軍の中央軍後方に敵か味方かも分からない謎の軍勢が現れたのを視認する。


「可成様。今川軍の後方に謎の軍勢が――」


 近くに居た家来もそれに気づき、俺っちに報告してきた。


「ああ、見えている」


 謎の軍勢の動向を見ていると、その軍勢は今川軍に攻撃を仕掛けた。

 ということは、友軍で間違いないな。

 俺っちは、友軍の旗印を確認する。


「あの旗印は……トシ(前田利家)か?」


 しかし、トシはまだ謹慎中だったはず?

 信長様の命令で参戦してきたのか? それとも、無断で参戦してきたのか?

 まぁ今はそんなことはどうでもいい。これで挟撃ができる!


「皆の者。トシが今川軍の背後を取っている今が絶好の好機だ。このまま敵中央軍に突撃して挟撃するぞ!」


 横陣から魚鱗の陣に陣形を変えて、今川軍の中央軍に突撃する。

 背後からの急襲と、正面からの攻撃を受けた今川軍の中央軍は瓦解寸前に陥った。


「このまま中央軍を殲滅(せんめつ)するぞォ」


 再び、俺っちは味方を鼓舞する。


「さっすが、アニキ! 俺様の急襲を見て挟撃してくれると信じてたぞ。おかげで、敵の大将松井宗信を討ち取ることが出来たわい。わっはっは」


 今川軍の中央軍を突き抜けて来たトシが、俺っちの元にやってきた。


「おお、トシか! 大将を討ち取るとは、良くやった。だが、安心するのはまだ早いぞ。今川軍の右翼と左翼が生き残っているからな。それよりも、何でここ居る? 謹慎中じゃなかったのか?」

「その通り。だから、殿にも内緒で参戦してるってわけよ」


 無断で参戦してるのに、全く悪びれた様子が無い。トシらしいっちゃ、トシらしいな。


「せめて俺っちには教えといてくれよ。正直、ヤバいかもと焦ってたからな」

「すまねぇ。だが、龍二が『敵を欺くにはまずは味方から』だとよ」

「……情報漏洩を避けるためか。しかし、龍二の策とはね。大体の事情は分かったから、早く本隊に戻れ」

「大将と副将を討ってるから、俺様が居なくても大丈夫。それに、利益が居るしな」

「利益を連れて来てたのか! なら安心だな。勝利したら、酒でも飲もうぜ」

「おぅ」


 今川軍の中央軍をほとんど倒したとはいえ、右翼と左翼を合わせれば五千近い数の兵が残っている。まだ、こちらの倍以上の数だ!

 それに、大将を討ち取ったとはいえ、まだ副将が残っている。ここからが正念場だ。


 大将を失った今川軍の中央軍残党は、右翼と左翼に合流する。

 敵右翼と対峙しているナリを助けるために、トシに敵右翼を攻撃するよう指示を出す。

 俺っちは、敵左翼と対峙しているツネを助けるため、攻撃を開始する。


 激しい乱戦になったが、俺っちは副将である井伊直盛を討ち取る。

 その直後、トシが副将の由比正信を討ち取ったとの報告が入った。


「しぶといな」


 大将と副将を失った今川軍だが、何とか持ちこたえていた。

 決め手を模索しているとこへ報せが届く。 

 その内容は、『毛利良勝様が今川義元を討ち取った』との勝報だった!

 この報せが戦場全体に伝わると、今川軍は戦意喪失して撤退していった。

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