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第24話 美少女アイドルちゃんは、うざい勧誘なんて、きっぱり断って俺と二人になりたいらしい。



ペースを戻していきます、徐々に。引き続きよろしくお願いします!



ショッピングモールに来たとなれば、迷うのはやっぱり昼ごはんだ。

テナントごとに分かれたレストランフロアもあれば、フードコートのように色んなものが集まった場所もある。


とりあえず俺たちは、レストランフロアを見て回っていた。


「うーん、なんの気分かなっ。なんか、気分の上がる奴がいいよね、せっかくのデートだし♪」

「気分の下がるご飯とかあるのかよ」

「ゴーヤ、きのこ、アボガド、ぶなしめじ!」

「単に嫌いなもの聞いたわけじゃないんだけどなぁ。まぁ、じゃあそれは避けようか」

「うんうん。あっ、そうだ。ここは私に奢らせてね?」


何円でも払っちゃいます! と、ブルジョワは健在だ。


「いやぁ、まだ料理うまくなってないし、いつも作って貰っちゃってるから、これくらいわねー」

「……えっと、いいの? でも、いつも材料費はほとんど貰っちゃってるよ」」


彼女がやってきたあの日から、俺たちは朝、夜はほとんど共にしている。


余裕がある時はほとんど弁当も作っているので、もはや三食同じだ。


それはほっとけば、カップ麺やらで済ませてしまう彼女が心配なのもあったし、


単に二人分の食費の方が安く上がるというのもあった。


料理って、一人暮らしには向いてないんだよなぁ、とにかく材料が余るし。


弁当に使い回すにしても、一人ではなく二人分というのは助かる。


「手間がかかってるでしょ? そのささやかなお礼だよ。お。ねぇ、あれとかどうかな?」


彼女が指差した店のは、到底「ささやか」ではない。

黒と白のモノトーン配色で作られたそのお店は、見るからに高級そうな焼肉店だ。


とはいえ、ランチタイム価格という可能性もある。

ちらっと怖気付きながらも値段表を見てみれば、「五千円〜」との記載だ。


「〜」っていうのが恐ろしい。青天井ですか、ソシャゲのガチャですか?


「うん、ここにしよっか? お肉っていうのもいいよねっ」


な、なんと頼もしい。そして自分が小さく思えてくる。


「えっと、さすがにここは……」

「そっかー、じゃあ別のところだね」


そんな会話とともに俺たちが店前を離れようとすれば、中から出てきた店員さんが俺に言う。


「どうですか、彼氏さん。とっても綺麗な彼女さんとちょっとリッチなランチは」

「……えっと」


彼女でもないし、奮発しようと息巻いてるのは俺じゃない。


「当店のお肉は最高級のランクでして、もちろんろ国産、さらにはA5ランクもございますしーーーー」


一方的に勧誘してくるタイプの店員さんらしかった。


店の雰囲気を鑑みれば、むしろマイナスになりそうなくらい、のべつ幕なしだ。


……こういうの、買わない(買えないとも言う)までも最後まで聞いちゃうんだよなぁ。


断れない性格ゆえ、店に入れないとなんだか申し訳ない気持ちにもなる。


が、


「もう結構ですよ。ありがとうございます、また別の機会にきますね」


今日は俺一人ではなかった。

佐久間さんは、鉄壁の笑顔を作ってその店員に突きつける。


その顔も、とても美しく綺麗だった。


けれど、作っているということは、すぐに分かる。どちらかといえば、アイドル・佐久杏子の顔だ。

ぽやっと木漏れ日のような笑顔ではなく、涼やかな氷の微笑み。


眼鏡をかけていても、その迫力は落ちないらしい。

最後はペコペコ頭を下げながら、店員さんは店の中へと戻っていった。


一連の流れを見届けて、俺はその場に立ちどまってしまう。


「さ、行こっか? 翔くん」


肩を俺の方へ軽く当てて、佐久間さんは腕を引いて先に行こうとする。


……なんというか、格好いいなと思った。


余計なものを余計と言える強さだ。


アイドルだから当然なのかもしれないけれど、俺に欠けているものを彼女は持っている。


「気に病むことないよ、迷惑だもん、あぁいうの。客引きと変わんないじゃん?」

「……ありがとう、佐久間さん」

「どーいたしまして! 

 ……って、ちょっと偉そうに言ってみたんだけど。翔くんと二人の時間だからさ、あんまり邪魔されたくなかったって言うのが一番かも。えへへ」


格好いい、と可愛いの切り替えスイッチが柔軟すぎて怖いんだが!?


「あ、ねぇねぇ、海鮮とかもありだよね」


再度、俺たちは数多ある店を見て回る。そうして結果的に落ち着いたのは、


「遠慮したわけじゃないなら、いいけどさぁ」

「そうじゃないよ、別に。アンパイって奴?」


フードコートだった。

ちょうどいい値段帯のご飯が、ずらりと並んでいて、各々の自由も効く。

レストランフロアのご飯は、どれも立派で、俺にしてみればどれも敷居が高く見えた。


「せっかく翔くんにいいところ見せようと思ったのに〜」

「いいところ、って?」

「私の彼氏になったら、ヒモになれます! 貯蓄もたくさんあるので!」


なに言ってるの、この人。


「……ヒモになりたい願望はないよ、別に」

「ちぇー、そっかぁ」


そこはむしろ、一応働くという意欲を褒めてほしい。


「……まぁ、いいんじゃないの、フードコート。高校生のうちは、これくらいが普通だって」

「! ……普通のデート?」

「そうだな、高校生らしい普通のデートだと思うよ」


実際、客席をよく見て回れば、何人も同じ学校の奴がいるだろう。

あえて探すような趣味はないが、リア充たちはいつもその辺にありふれている。


「そっか、普通のデート! うん、がぜん盛り上がってきたよ、私!」


普通の、と言うワードが佐久間さんの心を盛り上げたらしい。


俺たちはその普通に倣って、店たちの前をくるり一周する。


別々のメニューでもいいね、なんて話していたのに、その末に立ち止まったのは、全く同じオムライスだった。


列に並ぶ間、佐久間さんが問う。


「翔くんはなんでオムライスにしたの?」

「……なんとなくだけど、昨日は三食とも和食だったし」

「あははっ、全く同じ理由だ。金曜日の学食とかもラーメンだったもんねぇ。洋食を欲してたんだよ、私たち」


一呼吸おいて、


「なんか通じ合ってるみたいで嬉しいかも」


と、佐久間さんは首を下げて笑いこぼす。


ロマンチック風に言うけれど、個人的にはそうではないと思っていた。


「同じ食生活をしているんだから、別に奇跡とか運命じゃないんじゃ?」

「ふふっ逆に考えるんだよ、翔くん。

 奇跡とか運命に頼らなくても、通じ合えちゃったんだ。そう考えたら、素敵でしょ?」


また格好いいモードきてない? 今日ちょっと移り変わり激しくない?


「トッピングは、チーズ三倍濃厚ダレとデミグラスのあいがけかな! さらに、トンカツどん!」

「……俺はシンプルなままでいいかな」

「遠慮しちゃだめだよ?」


してない、本当にしてない。

ただ佐久間さんが、味の濃いものが好きなだけだ。

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