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第5章 13 薔薇の咲き乱れる庭園で

「ただいま。」


学校から帰宅したヒルダを迎えたのは一番仲良しのメイドのカミラだった。


「お帰りさないませ。ヒルダお嬢様。」


「あら?お母様は?」


ヒルダはいつも帰宅後、出迎えてくれるはずの母が姿を見せないのでカミラに尋ねた。


「はい、奥様はウィンザー家へお茶会へ呼ばれて今外出中です。」


「そうなの?珍しいわね・・・お母様がお茶会に参加するなんて・・私が足を怪我してからは一度も・・・。」


ヒルダはそこまで言って何かに気付いたかのように言葉を切った。


「そうだったわ・・・。お母様がお茶会に参加しなくなったのは・・・私が足を怪我してからだったのね・・・。」


「ヒルダお嬢様・・・。」


カミラはヒルダの悲し気な顔を見て胸を痛めた。


(可哀そうなヒルダお嬢様・・・。足を怪我してからは周りの反応がすっかり変わってしまって・・気の毒で堪らないわ・・。それにルドルフさんとの仲も・・・。)


そこでカミラはわざと明るい声を出して言った。


「ヒルダお嬢様、本日はヒルダお嬢様が大好きなアップルパイをおやつに焼いて貰うように頼んできますねっ!焼きたてを持ってきて頂くようにお願いして来ます。」


「ありがとう、カミラ。」


ヒルダは笑顔でカミラにお礼を言った。


「ヒルダ様、メイドの私にお礼なんか言わないで下さい。それでは今すぐ厨房へ行って参りますね。」


そしてカミラは急ぎ足で厨房へと向かった。


「ありがとう、カミラ。」


ヒルダは小さく呟くと、自室へと向かった。

部屋に入ると、制服を脱いで私服に着替えるとすぐに学校の宿題に取り掛かった。

ヒルダの通う中等学校は貴族達だけが通える学校なので、レベルが高く、授業内容も難しいので予習復習がかかせない。そして宿題だけでも1時間はかかってしまう。

来年には高等学校へ上がるので、勉強も頑張らなければならない。


宿題に取り組む事1時間―


「ふう〜・・・やっと終わったわ・・・。」


するとそこへ丁度タイミングよく、ノックの音が聞こえた。


「ヒルダお嬢様、アップルパイが焼けました。お持ちしても宜しいでしょうか?」


「ええ。お願いするわ。」


「失礼します。」


カミラが焼きたてのアップルパイと紅茶を持ってやって来た。途端に部屋中に紅茶の香りとシナモンの甘い香りがヒルダの部屋を満たす。


「うわあ・・・美味しそう・・・。」


ヒルダはテーブルに座ると、目を見張った。


「はい、先程味見して来ました。とっても美味しかったです。」


カミラの言葉にヒルダは笑った。


「まあ、もう味見してきたの?フフ・・・カミラったら。」


本来であればメイドが主人の為のおやつを食べる等と言う事はあってはいけない事だが、ヒルダはそう言う事は一切気にしなかった。メイドでもまるで自分の友達の様に接し、決してえばる事等は無い。それ故、ここで働く使用人達は心優しいヒルダの事が大好きだった。なのでヒルダが足に怪我を負った時は誰もが酷く同情し、より一層ヒルダに尽くすようになっていた。今回のアップルパイにしても、シェフ達は皆で一斉にアップルパイを焼き、それをカミラが試食して一番美味しいと思われるアップルパイを持って来たのであった。


「うん、とっても美味しいわ。」


ヒルダは嬉しそうにアップルパイを食べ、紅茶を飲み終わると言った。


「カミラ、夕食までリハビリを兼ねて庭を散歩してくるわ。」


「御一緒しましょうか?」


カミラは声を掛けて来たが、ヒルダはやんわりと断った。そして杖をつくと、ヒルダは自室を後にした。


 杖をつきながら、美しいバラの咲き乱れる庭園を歩いているとガゼボが見えてきた。


(あ・・・あの場所は・・・。)


ガゼボを見たヒルダの顔は曇った。ガゼボにはルドルフとの思い出が積っていた。優しくヒルダに笑いかけてくれたルドルフの事を思い出すだけで胸が締め付けられるように苦しくなって来る。


(ここにはいたくない・・・戻ろう。)


背を向けて屋敷に戻ろうとした時、遠くから自分の名を叫ぶ声が聞こえた。


「ヒルダ様っ!」


その声を聞いただけで、思わずヒルダの目に涙が滲んでくる。


(ルドルフ・・・!どうして此処に来たの・・?私達は・・もう会ってはいけないのに・・!)


ヒルダは不自由な足で、杖を突きながら必死でその場を去ろうとしたが、後ろから駆け足が聞こえて来る。そして次の瞬間・・・・・。


ヒルダは背後からルドルフに抱きしめられていた—。

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