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第1章 6 突然の縁談話

 額に触れたのはほんの一瞬だった。すぐにルドルフの唇は離れて行った。


「あ、あ、あの・・・ルドルフ・・・?」


真っ赤になって自分の手で額に触れるヒルダにルドルフは天使のような笑みを浮かべた。


「ヒルダ様、朝は会えないかもしれませんが・・これからは放課後は時々こちらにまた手伝いに来る事になったんです。またヒルダ様にお会い出来るようになりました。時々・・ここで会いませんか?もっとヒルダ様の事を教えて下さい。」


「え・・ええ。わ、私なんかでよければ・・・。」


ヒルダは顔を真っ赤にして俯いた。その時、強い風が吹いてヒルダの金の髪が舞い上がり、ルドルフの手に触れた。するとルドルフはその髪をすくいあげ、匂いを嗅ぐと言った。


「・・・ヒルダ様の髪は・・・バラのような香りがしますね。」


「え・・・?」


次の瞬間、ルドルフはヒルダの髪を離すと言った。


「それではヒルダ様、又今度会いましょう!」


ルドルフは手を振ると、その場を走り去って行った。


「ルドルフ・・。」


ヒルダは顔を真っ赤にしながら、走り去るルドルフの後姿をいつまでも見つめていた。



 その夜の事―


両親とヒルダの3人揃っての夕食の席での事・・・。


「ヒルダ。ここ最近ずっと元気が無かったようだけど、今夜はいつになく楽しそうだな?何かあったのか?」


ヒルダの父であり、この土地の領主であるハリス・フィールズが尋ねて来た。彼もまたヒルダと同様に金の髪を持ち、とても美しい外見をしている。


「ええ、そうね。ヒルダ。私にも教えて頂戴?何があったのかしら?」


優し気に語りかけて来る母、マーガレットもやはり金の髪の持ち主だ。


「あ、あのね・・・実は久しぶりにルドルフに会えたの・・・それが嬉しくて・・・。」


フォークに刺したチキンを皿の上に置くとヒルダは顔を真っ赤に染めて俯きながら言う。


「ルドルフ・・・誰だろう?」


「そうですね・・私も聞いた事が無い名前だわ・・どこの令息かしら?」


父のハリスも、母のマーガレットも首を捻る。


「あのね、ルドルフは厩舎で働くマルコさんの子供なの。」


ヒルダが説明すると、父と母の顔が険しくなる。


「何・・?厩舎で働く男の息子・・つまり平民ていう事なのか?」


「え・・ええ・そうだけど・・・?」


ハリスの雰囲気が変わったので、助けを求める為にヒルダはマーガレットの顔を見たが、彼女は悲しそうにヒルダの顔を見つめている。


「ヒルダ、よく聞きなさい。お前は貴族なのだ。貴族は貴族同士で交流する。平民と関わっては駄目だ。」


父ハリスはいつになく厳しい表情でヒルダを見る。


「何故ですか?ルドルフは勉強が凄く良く出来るし、優しくてとても素敵な男の子なのよ?」


しかし、父は深いため息をつくと言った。


「ヒルダ・・・ルドルフとか言う少年の話はもうやめなさい。それよりもヒルダ。お前に縁談の話が出ているんだ。以前開かれたダンスパーティーに参加された令息達で3人から申し込まれてるんだよ。写真があるから後で目を通しておきなさい。彼等はお前の美しい容姿に恋をしてしまったらしい。決定権はヒルダ、お前にあるからな?」


「決定権があるなら・・・それならこのお話、お断りいたします!わ、私が好きなのは・・ルドルフなんです!」


ヒルダは目に涙を浮かべると、食卓を立ち上がり、両親が止めるのも聞かずに部屋を飛び出して行った。

そして自分の部屋に入ると鍵を掛けてベッドへ飛び込むと枕に顔を埋めて泣き続けるのだった—。




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