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第9章 11 気になる相手

「このバゲットもスープもとても美味しいわね。やっぱりプロのシェフだと違うわね」


ヒルダは笑みを浮かべてフランシスを見た。


「い、いやぁ…俺はまだプロなんかじゃないよ。調理学校に通う学生だし、まだここでもまかない料理しか任されていないから」


フランシスは平静を装って答えるが、内心は浮かれていた。


(学園のマドンナだったヒルダと…こうしてレストランで貸し切りで2人きりで食事が出来るなんて夢みたいだ…。このままヒルダと恋人同士になれれば…)


フランシスには恋人はいなかった。何故ならどうしてもヒルダの事が忘れられなかったからだ。卒業して全く会えなくなってしまっても、同じ調理師学校の女子学生に告白されてもフランシスはヒルダが忘れられず、交際を断っていた。

フランシスがホールでアルバイトをしているのも、ヒルダが偶然食事に来店して会えるのではないかという希望を抱いていたからだった。そして今…ずっと会いたいと願っていたヒルダが目の前にいる。


フランシスは昨夜ヒルダと一緒にレストランに来ていたノワールの存在が気になっていた。


(本当にあの人物はヒルダの親戚なのだろうか…?)


帰り際、ノワールはフランシスを無意識の内に睨みつけていた。その視線がフランシスは気になっていたのだ。


「あの…さ、ヒルダ…。昨夜一緒に食事に来ていた男だけど…」


「あ…あの方ね…」


「う、うん。本当にただの親戚なのかなって思って…」


「勿論親戚よ。…あの方の所に今は身を寄せているの」


「え?!」


その言葉にフランシスは耳を疑った。


「だ、だけど…ヒルダはお姉さんと一緒に暮らしていただろう?」


「ええ。実は…姉が結婚することになったの。お相手は私の足の主治医であり…アルバイト先で雇ってくれていた整形外科の先生なのよ。そう言えばセロニア学園で校医を時々していたわね」


「あ、あの先生か?ヒルダのお姉さんはあの先生と結婚するのか?」


「ええ、そうなの。結婚式はまだ先だけどもう一緒に暮らしているのよ。それで昨夜一緒にレストランに来た親戚の方の所で今はお世話になっているの。アパートメントはもう解約してしまったから」


「そ、そうだったんだ…」


フランシスはショックを受けながらも思った。


(だ、大丈夫…。男とは言っても所詮はヒルダの親戚なんだ…別に恋人同士とか言うわけじゃない…)


「どうしたの?フランシス」


ヒルダは様子がおかしくなったフランシスが気になり、声を掛けてきた。


「い、いや。何でも無いよ。あ、食事済んだな?それじゃ試作品のデザートを持ってくるよ」


「ありがとう」


フランシスは立ち上がると、再び厨房へ向かった。


胸にある想いを秘めながら―。



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