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第9章 5 ノワールの嫉妬

 18時―


「え…?レストランて…ここだったのですか?」


ノワールに連れてこられたレストランを見てヒルダは目を見開いた。


「ああ、そうだが…来たことがあるのか?」


「え、ええ。実はこのレストランは高校生の時、クラスメイトだった人の両親が経営しているレストランなのです。それにカミラは彼の幼い弟妹のベビーシッターを一時的にやっていたのですよ」


「え?そうだったのか?」


そう、このレストランはフランシスの両親が経営するレストランだったのだ。


「すごい偶然ですね。でもここの料理は本当に美味しいんです。連れて来て下さってありがとうございます」


笑みを浮かべてヒルダは礼を述べる。


「そうか。なら早速中へ入ろう。実はもう席を予約してあるんだ」


「はい」


そして2人はレストランの中へと入っていった。



カランカラン


扉につけられたドアベルがなり、すぐにウェイターが現れた。


「いらっしゃいませ」


「え…?」

「あ…」


ヒルダとウェイターが同時に声を上げた。何と現れたのはフランシスだったのだ。


「ヒルダじゃないか」


「まぁ…フランシス。貴方だったの?」


「ああ、そうだよ。それにしても卒業以来だな?元気だったか?」


ヒルダに気さくに話しかけてくるフランシスのことがノワールは気に入らなかった。そこでフランシスに声を掛けた。


「18時に予約をしていた者だが席に案内してくれないか?」


「あ、申し訳ございません。こちらへどうぞ」


フランシスは前に立って歩き出した。その後ろをついて歩くヒルダとノワール。


(フランシス…すっかり変わったのね。以前とは別人だわ…)


ヒルダはフランシスの背中を見つめながら思った。




「こちらのお席になります」


案内された席は窓際のボックス席で、港町の夜景が美しかった。


「素敵な景色…」


ヒルダが呟くとフランシスが笑顔で答えた。


「だろう?この店は夜景目当てでくる客が多いから夜の方が昼間より人気あるんだよ」


「まぁ、そうなのね?」


ヒルダもフランシスに笑顔を向ける。その姿にどうしようもない嫉妬をノワールは覚えた。


「君、メニューを見せてくれるか?」


つい口調がきつくなってしまう。


「あ、申し訳ございません。こちらになります」


フランシスは頭を下げると2人にそれぞれメニューを差し出すと言った。


「お決まりになりましたらお呼び下さい」


「ああ」

「ええ」


ノワールとヒルダは同時に返事をする。そしてフランシスは再度頭を下げ、ホールへと戻って行った。


「何でも好きな物を頼んでもいいぞ?」


フランシスが立ち去るとノワールはヒルダに声を掛けた。


「ありがとうございます…では、私はシーフードグラタンにします」


「そうか。それじゃ俺はパスタ料理にしよう」


すると丁度そこへフランシスが通りかかった。


「あ、フランシス」


ヒルダが声を掛けた。


「ん?決まったのか?」


「ええ、私はシーフードグラタンで…こちらの方は…」


「シーフードのクリームパスタセットを頼む」


大人気ないと思いつつ、ついぶっきらぼうな言い方になってしまう。


「かしこまりました。食前酒にワインはいかがですか?」


フランシスが笑顔で声を掛けてくる。


「そうだな…それも頼もう」


(ワインを飲めば少しは気が晴れるかもしれないしな)


「すぐにお持ちします」


頭を下げて立ち去るフランシスをじっと見ているノワール。そんなノワールをヒルダは少しだけ不安な気持ちになってきた。


(どうしたのかしら…お店に入るまでは機嫌が良かったのに…私、何かノワール様の気に障る事をしてしまったのかしら…?)


ヒルダはまさかノワールが自分とフランシスの仲を嫉妬しているとは夢にも思っていなかったのだ―。



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