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第9章 4 家事の申し出

「ヒルダ、そう言えば食事についてだが…」


コーヒーを飲みながらノワールが声を掛けた。


「あ、それなら私が食事を作ります。大学が休みのときはお昼も作りますね」


するとノワールが慌てたように言った。


「いや、そんな事は別にしなくてもいい。ヒルダは家政婦ではないのだから、自分の分だけ用意すればいいだろう。俺の事は別に気にしなくてもいい」


「ですが、この家で全てお世話になるのですから…家の事くらいさせて頂けますか?そうでなければ肩身が狭くて…」


「別に肩身が狭いとか感じる必要は無い」


「…でも…」


ヒルダはそこで言葉を切った。


(ノワール様はお兄様の事で責任を感じて私の面倒を見ようと言って下さっている事が申し訳ないわ…)


うつむくヒルダを見てノワールはある事に気付いた。


「もしかして…俺がエドガーの罪滅ぼしのつもりでヒルダの世話をしようとしている…そう考えているんじゃないのか?」


「え?な、何故その事を…」


「やっぱりな…」


ノワールはため息をついた。


「いいか?俺は贖罪のつもりで一緒に暮らそうと言ったわけじゃない。お互いに1人になってしまったし、俺にしろヒルダにしろ互いに1人で暮らすには住んでいたアパートメントが広すぎると思ったから…どうせなら家を借りて2人で暮らしたほうがいいと思ったからだ。それに女性の一人暮らしはやはり心配だ。ヒルダの両親とカミラにも約束したからな」


ノワールはそこで一旦言葉を切ると、ためらいがちに言った。


「それに…俺がヒルダと一緒に暮らしたかったから…な」


「え?」


ヒルダは驚いて顔を上げた。するとノワールは慌てたように言う。


「あ、つ、つまりヒルダは俺のアシスタントになったわけだろう?一緒に暮せば仕事の頼みもしやすいし、何か不明な点があったとしてもすぐに尋ねることが出来るだろう?」


「ああ…そういう事ですね?」


「そうだ」


「でも、それでもやはり何もせずに置いていただくのは気が引けます。いくら遠縁の親戚だとしても…ほとんど私とノワール様は他人同然ですし…」


他人同然…。


ヒルダの口から出た言葉は思った以上にノワールの心に突き刺さった。


(そうだ、所詮俺とヒルダは他人…ならヒルダの肩身が狭くならないように家事をたのむべきなのかもしれないな…)


「そうか。なら…家事を頼むか…」


「はい、お料理もお掃除もお洗濯も…全て私がやりますので」


ヒルダはそこでようやく安堵の笑みを浮かべた。


「だが、今夜は食事の準備をしなくていいぞ」


「え?何故ですか?」


「ヒルダの引越し祝いにレストランへ行こうと思っているんだ。シーフード料理が有名なレストランだ」


「本当ですか?ありがとうございます」


「今夜18時に予約を入れているから17時半になったら出かけよう。俺はそれまで仕事をする」


「何かお手伝いすることがありますか?」


するとノワールは少し考える素振りをするとヒルダにメモを渡してきた。


「それならここにメモした単語について詳しく調べてもらえるか?そしてそのページに栞を挟んでおいていくれ」


「はい、分かりました」


そして2人は17時半まで黙々と作業を続けた―。



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