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第5章 1 転校生

「ルドルフ。どうしたの?何だか元気が無いようだけど・・?」


週明けの月曜日。

今朝も2人は同じ馬車に乗って学校へ向かっていた。

ヒルダは何となく元気が無いルドルフが気になっていたのである。


「いえ、そんな事ありません。ヒルダ様。それにしても良かったですね。足の骨が綺麗にくっついて。」


「ええ、本当にあの先生には感謝だわ。でも・・・。」


ヒルダは悲し気に俯いた。


「ヒルダ様・・・。」


ルドルフは何故ヒルダが悲しげな様子を見せているのかはよく分かっていた。日曜日の夜に父と母からヒルダの話を聞かされていたからだ。


< 可哀そうなヒルダ様・・・。やはりヒルダ様の左足の麻痺は残ってしまうそうなんだよ。 >


ルドルフはその話を思い出し、ヒルダの左側に座ると、手を握りしめた。


「ルドルフ・・・。」


ヒルダは顔をあげてルドルフを見た。


「ヒルダ様・・・僕はずっとヒルダ様の御側にいます。こうして貴女の手を取って、一緒に歩いて行きます。だから・・そんな悲しい顔をしないで下さい・・。」


「ルドルフ・・・。」


ヒルダは胸が熱くなり、思わず涙ぐんでしまった。するとそれを見たルドルフはハンカチを取り出すと、そっとヒルダの涙を拭った。


「ヒルダ様・・・僕は何があっても貴女の味方です。泣きたい時は・・・僕の胸で泣いて下さい。」


そしてヒルダを胸に抱き寄せた。


「!」


それは初めての抱擁だった。ヒルダは恥ずかしくて心臓が今に飛び出しだしそうだったが、ルドルフの心臓も早鐘を打っている事に気が付いた。


(ルドルフ・・・貴方も緊張してるの・・?)


ヒルダはルドルフの胸に顔を埋め、おずおずと背中に手を回すと、ルドルフの身体がビクッと動き・・・ヒルダを抱きしめる腕に力が籠るのだった—。




 ルドルフの手助けで馬車を降りるとヒルダは病院で貰って来た杖を突いた。


「ヒルダ様。本当に1人で教室まで行けますか?何なら僕が一緒について・・・。」


ルドルフの言葉を慌ててヒルダは止めた。


「な、何を言ってるの?ルドルフ・・私なら大丈夫。1人で教室まで行けるから心配しないで?」


「ですが・・。」


尚も言い淀むルドルフにヒルダは言った。


「ねえ、聞いて。ルドルフ。私はこんな足になってしまったけど、お医者様の話では杖さえあれば日常生活に支障は無いと言われてるの。だから・・・あまり私を甘やかさないで?さもないと・・・この先、私・・1人で生きていけなくなるかもしれないから。」


「ヒルダ様・・でも僕はずっとヒルダ様の側に・・・。」


言いかけた時、予鈴が鳴った。あと10分でホームルームが始まる合図だ。


「あ・・・。」


ルドルフは残念そうに言う。


「ね?ルドルフ。早く教室へ行かないと遅刻になっちゃうから。」


「は、はい・・・。」


名残惜しそうにこちらを何度も振り返るルドルフに手を振ると、ヒルダは杖を突いて教室へと向かった―。



「おはよう、ヒルダ。ギプス外れたのね?」


教室へ入るとシャーリーが声を掛けてきた。


「ええ。そうなの。これでお風呂に入るのが楽になったわ。」


ヒルダは笑顔で答える。


「ねえ。そう言えば知ってる?今日から転校生が来るんですって。」


「転校生?この時期に?」


しかし考えてみればルドルフも中途半端な時期にこの学校へ転校してきている。


「ええ。男爵家の娘らしくて・・・しかも最近爵位をお金で買いとったらしいのよ。」


「え?そうなの?」


ヒルダの胸はドキリとした。


(ルドルフと同じだわ・・。)


その時、ガラリと教室のドアが開き先生が中へ入って来た。そして後ろに続く少女は・・・。


「グ・・・グレースさん・・・。」


ヒルダは血の気が引くのを感じた―。



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