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第4章 13 グレースの来訪

 その頃、ルドルフは自宅で受験勉強をしていた。元々ルドルフは頭は良かったが、貧しかったので高等学校へ行く予定は無かった。しかし、ハリスによって男爵家の爵位、そして僅かながらの領地にさらには邸宅迄与えられ、生活は格段に良くなっていた。そのうえ、高等学校へも行く事が出来るようになったので、今は日々受験に向けて猛勉強を重ねていた。よりレベルの高い高等学校に入学出来れば大学進学も夢では無い。大学を卒業すればそれだけ良い仕事にも就けるし、将来的にヒルダと結婚した場合は楽をさせてあげる事も出来る・・・そこまでルドルフは考えていた。


 ルドルフの母も今は食堂の仕事を辞め、フィールズ家で厨房の仕事をしていたので今はルドルフが家に1人きりだった。

それは数学の勉強をしていた時の事だった。突然ドアのチャイムの音が鳴り響いた。


「誰だろう・・・?」


立ち上がって玄関へ向かい、ドアを開けると何とそこにはグレースの姿があった。


「こんにちは、ルドルフ。」


グレースはニコニコしながらルドルフを見つめている。


「グ、グレース・・・ど、どうしてここが分かったの・・・?」


ルドルフはグレースたちには自分が何処へ引っ越したのかは告げなかった。何せ彼等とは喧嘩別れをしてしまったようなものだったからだ。


「ルドルフの前の家のご近所さんに教えて貰ったの。ねえ・・中へ入ってもいい?」


甘えた声でグレースはルドルフに頼んできた。ルドルフはグレースの告白を受け入れなかった負い目があったので断る事が出来なかった。


「うん・・・いいよ。どうぞ。」


ルドルフはグレースを招き入れると居間へ案内した。


「へえ〜・・・すごく素敵なお屋敷ね。・・・このお屋敷って・・・ヒルダさんの所の別宅だったんでしょう?」


「うん、そうだよ。待っていて、今紅茶を淹れて来るから。」


ルドルフがキッチンへ行こうとすると、何故かグレースもついて来た。


「待って、ルドルフ。私が淹れてあげるから。」


「え・・・?でも・・・。」


ルドルフが言い淀むとグレースは笑顔で言った。


「いいから、いいから。私ね、紅茶を淹れるのが得意なのよ?あ、それならルドルフはお湯を沸かしてくれる?2人で一緒にやりましょう?」


「・・・うん。分かったよ。」


ルドルフはやかんに水を入れてお湯を沸かし、グレースはポットに茶葉を入れてお湯を注ぎ、ティーカップに2人分の紅茶を淹れるとトレーに乗せて居間へと運んだ。


2人で向かい合わせに座り、紅茶を飲む。


「・・・うん、本当だ。グレース。君は紅茶を淹れるのがうまいね。」


ルドルフは紅茶を一口飲むと言った。


「本当?ルドルフに褒めて貰えて嬉しいな。」


グレースは、はにかんだ笑みを浮かべた。もし今の彼女の姿を見たイワンやコリン、ノラはさぞかし驚いた事であろう。


「ねえ、ルドルフ。おじさまやおばさまはどうしてるの?」


「今父さんと母さんはフィールズ家で仕事をしてるよ。」


「え?土曜日なのに?酷いわね・・・。」


グレースはわざと顔をしかめると言った。


「そうじゃないよ。今日は特別なんだ。今日はヒルダ様の足のギプスが外れる日で、

首都の大病院へ行ってるんだよ。帰って来るのは明日で、留守を守っていないといけないからだよ。」


するとそれを聞いたグレースの目が輝いた。


「そうなの?それじゃヒルダさんの足は完全に治るのね?」


「ううん・・お医者さんの話だと・・・一生麻痺が残るから杖が無いと歩けないらしいんだ・・・・。」


「ふ〜ん・・・。そうだったの・・。なーんだ。」


ルドルフはグレースの物言いに少し引っ掛かりを感じた。いや、そもそも何故グレースがここへやって来たのか分からなかったので尋ねる事にした。


「ねえ、そう言えば・・・グレース。今日は何の用事があって来たの?」


「そうなの!実はね・・・私もついに貴族になれたのよ!お父さんが男爵家の地位をお金で買ったの!だから今日からは私もルドルフと同じ貴族よ!これで・・・つり合いが取れるようになったよね・・・?」


グレースは意味深な笑みを浮かべてルドルフを見つめた—。


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