第7章 12 喫茶店の2人
エドガーは急いで喫茶店へ向かい、扉を開けた。
カランカラン
室内には暖炉が置かれ、暖かかった。
(ヒルダは何処にいるのだろう…?)
辺りを見渡すと、窓際の一番奥のテーブルにヒルダが座っているのが目に止まった。
(ヒルダ…)
そしてエドガーはヒルダに近付いていった。
一方、ぼんやり窓の外を眺めていたヒルダはエドガーがそばに来ていたことにすら気付いていなかった。
「ヒルダ…」
エドガーに声を掛けられ、ようやくヒルダは我に返りエドガーを見た。
「あ、エドガー様。随分早かったですね?もう出てきて大丈夫なのですか?」
「ああ…兄さんが代わりに対応してくれているんだ」
エドガーは少しだけ困った顔で答えながら席に座った。ヒルダが座るテーブルの前にはコーヒーカップが置かれている。
「ヒルダは何を飲んでいるんだ?」
「ホットココアを飲んでいます」
「そうか…俺はホットコーヒーにでもしよう」
そしてサッと手を上げるとすぐに女性店員がやって来た。
「いらっしゃいませ」
「ホットコーヒーを1つ」
「かしこまりました」
ウェイトレスはオーダー用紙にメモを取るとテーブルから去っていく。
「すまなかった…ヒルダ」
突然エドガーは頭を下げて来た。
「え?どうされたのですか?」
ヒルダは訳が分からず頭を傾げる。
「先程の出版社での事だ…」
「あぁ…あれの事ですか?別にエドガー様のせいではありませんから気にしないで下さい。それよりも私の方が謝罪するべき立場です。すみませんでした。勝手に出版社を出て行ってしまって…本当はあのまま帰ろうかと思っていたのですが、出入り口でノワール様にお会いしたのです。そこで引き留められて、喫茶店で待つように勧められました」
「そうか、兄さんには感謝しないといけないな。そうでなければヒルダと過ごせる時間はあの場で今日終りになっていたから」
言いながら思った。何故自分で出版社に来る時間を取れたのに、自分をわざわざ行かせたのだろう…と。ノワールに言われて出版社に行かなければ、リゼとヒルダは鉢合わせする事も無かったし、トラブルになる事すらなかったのだから。
「でも知りませんでした…」
「何が?」
「出版社にあんなに綺麗な女性が働いているのですね?」
「綺麗?リゼの事が?」
(ヒルダは何を言っているんだ?ヒルダに比べたらリゼなんて足元にも及ばないと言うのに…いや、今まで見て来た女性の中で…俺はヒルダより美しい女性など見たことが無いと言うのに)
だからエドガーは正直に言った。
「俺から見れば…ヒルダの足元に敵う様な女性はいないと思うぞ?綺麗なのは外見だけんじゃない。心だって美しいと俺は思っている」
普通であれば、恥ずかしくて言えない台詞ではあったが、何故かヒルダにだけは自分の本心をさらけ出す事が出来た。
「あ、有難うございます…エドガー様」
ヒルダは頭を下げて、お礼を述べた。
顔を上げた時のヒルダの頬は…薄っすら赤く染まっていた―。




