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第7章 4 カミラの回想

「雪が降って来たわ…。ヒルダ様、そろそろお帰りになる頃かしら…」


窓の外を眺めながらカミラはポツリと呟き、薪ストーブの上に置かれたケトルをポットに注ぎ入れながら、エドガーと交わした会話を思い出していた―。



****


 エドガーがアパートメントを訪ねて来たのは午後3時を少し過ぎたところだった。カミラはこの日たまたま仕事が休みで家で家事をしていた。明日はミートパイを作ろうと思い、下ごしらえをしていた時に部屋の中にノックの音が響いた。


コンコン


「あら…?誰かしら?」


カミラは玄関へ向かい、ドアアイで外を確認して驚いた。何とそこに立っていたのはエドガーだったからである。慌てて扉を開けると、エドガーが笑顔でカミラに言った。


「久しぶりだな、カミラ。ヒルダは…いるかな?」


「はい、おひさしぶりです。エドガー様。ヒルダ様なら本日はアルバイトに行っておりますが?」


「そうか…アルバイトか…何時に終わるのだろう?」


「5時には終わりますよ?」


「そうか…5時か…」


「宜しければ部屋の中でお待ちになりますか?」


「え?いいのか?」


「ええ。もちろんです。どうぞ」


カミラは笑顔でエドガーを招き入れた。




「お茶をどうぞ」


カミラはリビングに招き入れたエドガーの前に紅茶が注がれたティーカップを置いた。


「ああ、ありがとう」


エドガーは早速紅茶に口を付けると言った。


「ありがとう、美味しいよ」


「いえ…」


「ところでカミラ…聞きたい事があるんだが…」


「はい、何でしょう?」


「ヒルダに聞いたんだ。カミラは今、ヒルダの主治医でもあり…アルバイト先のアレン先生と交際しているって」


「は、はい。そうです」


カミラは少しだけ頬を染めながら返事をする。


「いずれ…結婚は考えているのだろう?」


「そ、そうですね…。アレン先生にはさり気なく将来の話はされていますから。ですが、そうなった場合…」


そこでカミラは言葉を切った。実はカミラは以前からアレンにプロポーズをされていた。ただ…そうなると、ヒルダを1人きりにしてしまうことになる。


「ひょっとして…ヒルダの事を気にしているのか?」


「!は、はい…」


エドガーは少しの間だけ、無言だったが…やがて口を開いた。 


「カミラも既に知っているとは思うが…俺はヒルダの事を…愛している。ルドルフとヒルダの仲を応援しつつも…ヒルダへの思いを断ち切ることが出来なかったんだ…」


「エドガー様…」


「恐らく、ヒルダは俺の事などこれっぽっちも思ってはいないだろうけど…近いうちにヒルダにプロポーズしたいと思っている。仮に断られたとしても…兄としてヒルダを支えていきたいと考えているんだ。だから…安心してアレン先生と結婚していいと俺はおもっているよ」


そしてエドガーは再び紅茶に口をつけた―。



****


「エドガー様は…ひょっとすると今夜ヒルダ様にプロポーズされたのかしら…」


ぽつりと呟いたとき…。


「ただいま」


玄関でヒルダの声が響き渡った―。






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