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第4章 13 エドガーとの話

「お兄様…久々にお会いできて嬉しかったです…」


ヒルダの言葉にデイビットと両親がピクリと反応した。


(ヒルダ・フィールズ・…まさか本当にエドガーを兄として慕っていたのか…)


デイビットはヒルダがエドガーを見る目に親しみが込められているのを感じた。実のところ、デイビットは一計を案じていたのだった。エドガーはフィールズ家に養子として籍を入れた為、フィールズ家の人間たちから蔑まれているのではないかと…。

しかしヒルダを見る限りではエドガーの事を兄として慕っていることがすぐに理解する事が出来た。


「ヒルダ、駅まで送ろう…いや、送らせてくれ」


「お兄様…」


エドガーは家族をぐるりと見渡すと言った。


「ヒルダを駅まで見送ります。いいですね?」


「ああ、行って来いよ。エドガー」


真っ先に返事をしたのはノワールだった。


「そ、そうだな。始めて来た場所の様だし…見送ってやれ」


父親が言葉を濁しながら言う。


「行ってらっしゃい」


母親は複雑そうな顔を浮かべながら手を振る。


「さよなら。ヒルダさん」


ローラがヒルダ声を掛けて来た。


「あ、さよなら…」


「それじゃ、行こう。ヒルダ」


「はい」


エドガーに促されてヒルダは頷いた。そしてノワールを見た。


「ノワール様…それでは失礼します」


「ああ。気を付けて帰れよ」


そっけない返事をするとノワールはエドガーに言った。


「ヒルダを頼む」


「…!は、はい…」


そしてヒルダとエドガーはハミルトン家を後にした―。



****


「ヒルダ…」


ハミルトン家を出るとすぐにエドガーが声を掛けて来た。


「はい、何でしょうか?」


「ノワール兄さんと…ひょっとして恋人同士なのか?」


その声は酷く寂しげだった。


「えっ?!まさか。違います」


ヒルダはエドガーの突然の質問にすっかり驚いてしまった。


「そうか…違うんだな?」


エドガーの顔に安堵の表情が浮かんだ。


「ええ、勿論です。私とノワール様は大学の先輩と後輩の間柄…それだけの関係ですから」


「…ヒルダ。一見ノワール兄さんは冷たそうな人間に見えるけど…一番俺の身を案じてくれている人なんだ。フィールズ家から養子縁組の話が出て…俺が指名された時も最後まで渋っていて…養子になって幸せになれるのかって…」


エドガーはポツリポツリと語っている。ヒルダはそれを黙って聞いていた。


「だけど、俺は自分から望んでフィールズ家に養子に入ったんだ」


「後悔…していますか?フィールズ家に養子に入ったこと…」


「…どうかな?だけど…こうしてヒルダと話が出来る間柄になれたから…」


しかし、それ以上の事はエドガーは口にしなかった。やがて辻馬車乗り場に到着した。客待ちの辻馬車が既に止まっていたので2人は乗り込もうとした時、エドガーがヒルダの方を振り向いた。


「ヒルダ、足が痛むんじゃないのか?」


「え…?」


「いつもより足を引きずって歩いているように見えたから」


「は、はい。少しだけ…キャッ」


するとエドガーは無言で軽々とヒルダを抱き上げると馬車に乗り込み、ヒルダを椅子に座らせた。


「お客様、どちらまで行かれますか?」


エドガーが馬車に乗り込むと御者が尋ねてきた。


「駅までお願いします」


「はい」


そして馬車はガラガラと音を立てて走り始めた―。



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