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第2章 5 エドガーの結婚式 2

「ヒルダ。会いたかったわ」


紫色のパーティドレス姿のマーガレットはガーデニング用のテーブルセットに着席していたが、ヒルダを見ると立ち上がった。


「お母様、お久しぶりです」


ヒルダとマーガレットは固く抱き合った。


「カミラ、ご苦労様でしたね」


そして母娘の抱擁を交わすと、背後で控えていたカミラに声を掛けた。


「奥様、お久しぶりでございます」


カミラはマーガレットに頭を下げた。


「ヒルダ、エドガーにはもう会ったのかしら?」


ヒルダとエドガーの状況を何も知らないマーガレットが尋ねてきた。


「い、いえ…まだお兄様にはお会いしていません」


目を伏せながら返事をするヒルダにハリスは何かを感じ取った。


「まぁまぁ、エドガーへの挨拶は後でもいいじゃないか。今日の主役はエドガーで今は他の出席者たちと挨拶を交わしているから忙しいし。式の後で、新郎新婦と並んだ時に挨拶に行けばいい。それよりも新婦のエレノアに先に挨拶をしたほうが良いだろう。何しろヒルダの義理の姉になる相手なのだから」


ハリスに言われ、ヒルダは頷いた。


「そうですね…確かに新しい家族になる方ですから…」


「よし、ならば付いておいで、一緒にご挨拶に行こう」


ハリスは笑みを浮かべてヒルダに言った。


「はい、お父様」


そして2人は新婦のエレノアの元へと向かった。



「「…」」


ハリスに連れられて移動するヒルダをマーガレットとカミラは無言で見つめていたが、やがてマーガレットはため息を付くと言った。


「ヒルダ…一体どうしたのかしら…屋敷にも宿泊しないで今回は駅前のホテルに宿泊しているし…」


そしてチラリとカミラを見た。


「ねぇ、カミラ。貴女…何か知っているのじゃなくて?」


「奥様…」


カミラはマーガレットをじっと見つめた。


(今後の事を考えると…奥様にだけは事情を説明したほうがいいのかも知れないわ…ヒルダ様とエドガー様の為にも…)


「奥様…今からする話ですが…どうか内密にして頂けないでしょうか?」


「ええ、ヒルダが…それを望んでいるなら分かったわ。私の胸にだけ留めておく」


マーガレットは頷いた。


「はい、実はこの間…ヒルダ様が里帰りしたときの事です…。馬車に乗って駅へ向かう時にエドガー様が馬に乗って追いかけてきたのです」


「まぁ…エドガーが?」


「はい、そしてヒルダ様は馬車を止められて、外に降りました。私は中にとどまり、御二人の様子を馬車の中から見ていました。すると…突然エドガー様がヒルダ様を抱きしめて…キスを…ほんの一瞬ではありましたが…」


「!」


マーガレットが驚いたように顔を上げた。


「ま、まさか…」


「その時からです。ヒルダ様の様子が…少しおかしくなったのは…手紙も受け取っていました」


「そう…」


「エドガー様がヒルダ様に好意を寄せていることは明らかに分かっていました。おそらくあの時…」


「それでヒルダは今回の結婚式で…屋敷には泊まらなかったのね…?けれど、今日の式が終了すれば2人は新婚旅行へ行くわ。お相手からの希望が合って。それならヒルダは今夜は泊まっていくわよね?」


「ええ…そうですね」


それを聞いたマーガレットはポツリと言った。


「ヒルダはエドガーの事を…どう思っていたのかしら…」


「ヒルダ様の心の中には未だにルドルフ様がいます。その事はエドガー様も気が付いていたはずです。ですから尚の事…ヒルダ様の事を諦めたのではないでしょうか?」


「そう…確かにそうかも知れないわね…」


そしてマーガレットはため息を付くと、青い空を見上げた―。

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