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第5章 17 それぞれのクリスマス 13

「さあ、エドガーとアンナ嬢は2人並んで仲睦まじい様子を見せておくのだぞ?」


ハリスは笑顔でエドガーとアンナに声を掛けた。


「は、はい…」


エドガーは何とか頷いた。


「はい、ハリス様」


アンナはこれから何が起こるかさっぱり分らなかったがハリスの言う通り、エドガーにピタリと寄り添った。その様子をアンナの両親は満足気に見つめている。

そしてハリスは声を張り上げた。


「御集りの皆様!本日はおめでたい発表があります!こちらにおります現在婚約中のエドガーとアンナが来年結婚する事が決定致しました。どうぞ盛大な拍手で祝ってやってください!」


すると、ハリスの言葉に会場内で一斉に拍手が響き渡った。ハリスやアンナの両親は笑顔で拍手する招待客たちに頭を下げている。


(え…!私とエドガー様が来年結婚する事が決定したの・‥‥?!)


アンナにとってはそれはまるで夢の様に幸せな突然の発表だった。エドガーにはまだ一度も話した事は無かったが、アンナはエドガーと見合いをする前から恋をしていた。両家は見合いをする前に互いのプロフィールの他に顔写真を交換していた。そしてアンナは美しいエドガーの写真を一目見た瞬間に恋に堕ちてしまったのだった。


(嬉しい…私、今が最高に幸せだわ…。エドガー様もそう思って下さっているかしら?)


「ねぇ、エドガー様…」


アンナはエドガーに声を掛けた瞬間、凍り付いてしまった。何故ならエドガーの顔色が真っ青だったからだ。しかも小刻みに震えていた。


(そ、そんな…エドガー様…!そ、そんなに私と結婚するのが嫌なの‥?)


いくらまだまだ子供のアンナでも分る。エドガーが結婚の話を決して喜んでいるわけではないと言う事を。


(エドガー様…!)


だが、仮にもアンナは伯爵令嬢である。折角集まってくれた招待客たちの前で無様な姿を見せる訳にはいかなかった。そして勇気を出してエドガーの手をギュッと握りしめた。


「え?アンナ嬢?」


アンナに手を強く握りしめられ、エドガーは我に返った。覚悟はしていたとはいえ、まさかこの場で自分に事前に何も報告が無い状態で結婚発表をハリスがするとは思わなかったからだ。だが、アンナの表情を見た時に彼女に対して酷い罪悪感が沸きあがってしまった。


「エドガー様…」


アンナの声は震えていた。


「大勢の人たちの前ですから…い、今だけでも笑って頂けますか…?お願いします…」


アンナはまるで泣き笑いのような顔をエドガーに向ける。


(アンナ嬢…!)


その時、エドガーは自分の愚かさに初めて気づいた。いくら不本意とは言え、いずれアンナと結婚しなくてはならないのは決定済で納得していたはずだ。それが時期が早まるだけの事。そして自分の態度でアンナを傷つけてしまっている事に気付かされた。

そこでエドガーは優しい笑みを浮かべてアンナを見つめると、力強くその手を握り返した。


(エドガー様…!)


アンナはエドガーが微笑んで、その手を握り返してくれたことが嬉しくてたまらなかった。


「アンナ嬢…」


エドガーはアンナの名をそっと呼んだ。


「エドガー様‥‥?」


アンナが顔を上げてエドガーを見た。するとエドガーはアンナの頬にそっとキスをした。


(エ、エドガー様…!)


エドガーにキスされ、アンナの顔は見る見るうちに真っ赤になった。そして会場に集まった人々はそんな2人にますます大きな拍手を送るのだった―。







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