表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

302/563

第2章 13 『ボルト』のホテルで

 ルドルフの言葉通り、駅の真正面がホテルだった。レンガ造りの5階建てのホテルはここ、『ボルト』の町では唯一のホテルらしい。


ルドルフはヒルダを伴ってホテルに入るとヒルダをホールのソファに座らせて1人でフロントへ向かった。そこには男性のフロントマンが立っていた。


「すみません。2部屋予約していたルドルフ・テイラーと申します。」


「はい、お待ちしておりました。ルドルフ・テイラー様と・・・お連れの方1名ですね?」


フロントマンは帳簿をめくりながらペンでチェックした。


「はい、そうです。」


「少々お待ち下さい。」


フロントマンは部屋のキーを2本背後の棚から取り出し、ガチャリとカウンターテーブルの上に置いた。


「お部屋は301号室と302号室になります。どうぞカギをお持ち下さい。」


「ありがとう。」


そしてルドルフは部屋番号が付いたカギをカウンターテーブルから受け取ると、荷物番をしながら待っているヒルダの元へと向かった。


「ヒルダ様。」


背後から声を掛けられ、ヒルダは笑顔で振り向いた。


「ルドルフ。」


「お待たせしました。ヒルダ様。部屋が決まりました。301号室と302号室だそうです。それでは行きましょうか?」


ルドルフはヒルダに手を差し伸べると言った。


「ありがとう・・。」


ヒルダはルドルフの手に右手を乗せると立ち上がり、質問してきた。


「ねえ・・・ルドルフ。301号室と言ったら・・3階の事よね?」


ヒルダの顔には少しだけ不安が混ざっていた。


「あ・・・。」


ルドルフはヒルダの考えが分かった。足が不自由なヒルダは3階まで階段を上るのは少し不安を感じているという事に。


「大丈夫ですよ、ヒルダ様。ここは工場の町『ボルト』です。ちゃんとエレベーターが設置してあるので大丈夫ですよ?」


ヒルダを安心させるために笑顔で答える。


「え・・?エレベーター・・・・?」


一方のヒルダは初めて聞く言葉に首を捻った。


「ルドルフ、エレベーターって何かしら?」


「百聞は一見に如かずですよ、では行ってみましょう。『エレベーター』乗り場へ。」


ヒルダはルドルフに手を引かれ、エレベーターホールへ向かった―。





「こ、これが・・・エレベーターなの・・・?」


ヒルダは目の前にあるエレベーターを見て目を見開いた。


「ええ。そうです。僕も見るのは初めてなのですが・・・この中のボックスに入って、レバーでボックスが上下に動くそうですよ。仕組みはよくわからないのですが、ワイヤーで巻き上げて動かしているそうなんです。」


「そうなの・・・本当にこの辺りは都会なのね・・・カウベリーに住んでいたころはバスやエレベーターなんて考えられなかったもの・・・。」


感心しているヒルダにルドルフは言った。


「ヒルダ様。ここで待っていて下さい。今ホテルの人を呼んでエレベーターを動かしてもらいますから。」


「ええ。分かったわ。」


ルドルフはすぐにフロントへ向かうと、エレベーターを動かしてほしい旨を説明し・・・ホテルマンを連れて戻ってきた。


「お待たせいたしました。すぐにご案内します。」


ホテルマンはエレベーターの引き戸に手を掛けると、ガラガラと開けた。すると中は何もない狭い空間だった。


「どうぞ、お乗りください。」


2人が乗り込むと、再びホテルマンはエレベーターのドアを手で閉じると、レバーを操作する。


ガコン・・・・


大きな音を立てて、ゆっくりとエレベーターは上昇していき・・。


チーン


音が鳴った。


「お待たせ致しました。3階に到着致しました。」


ホテルマンの言葉にヒルダは驚いた。


「まあ・・もう着いたの?」


「はい、足元にお気をつけてお降りください。」


ホテルマンが言う。


「行きましょう、ヒルダ様。」


「ええ。」


そして2人は手を取り合ってエレベーターを降りた―。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ