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第2章 5 デートの終わりに

 ルドルフはヒルダの手をギュッと握りしめると言った。


「ヒルダ様、すぐそこに喫茶店があるので・・少し休んでいきませんか?」


「え?ええ・・・?」


ヒルダは不思議だった。ついさっきハンバーガーショップを出たばかりなのにルドルフが喫茶店に入ることを提案してきたからだ。


「それじゃ、入りましょう。」


ルドルフはヒルダと手をつないだま、ゆっくりと喫茶店へ向かって歩き始めた―。



カランカラン


ドアベルを鳴らしながらルドルフとヒルダは喫茶店の中へと入った。

店内には客がほとんどおらず、静かな店内からは蓄音機でクラシック曲が流れている。


「ヒルダ様、一番奥のテーブルへ行きましょう。」


「え?ええ・・。」


ヒルダはルドルフに手を引かれたま店内の一番奥へと案内されると、ルドルフが椅子をひいた。


「さ、ヒルダ様。どうぞ。」


「あ、ありがとう・・。」


まるで貴族令嬢だった頃のような扱いを受け、ヒルダは頬を染めながら静かに腰を下ろした。ルドルフはヒルダの向かい側に座ると言った。


「ヒルダ様、時々僕はここの喫茶店へ来るのですが・・ホットココアが美味しいですよ。良かったらそれにしませんか?」


「そうね・・ルドルフのお勧めのホットココアにするわ。」


するとタイミングよくウェイトレスの女性がお水を持ってやって来た。


「いらっしゃいませ。ご注文はお決まりですか?」


「ホットココアを2つ下さい。」


ルドルフはウェイトレスに言う。


「はい、お待ち下さい。」


ウェイトレスがその場から去るとルドルフが言った。


「ヒルダ様・・・足が痛むのですよね?」


「え?」


突然ルドルフに足の痛みを指摘されてヒルダは目を瞬かせた。


「ルドルフ・・気が付いていたの?」


「はい・・・申し訳ありませんでした。もっと・・僕がヒルダ様の足の具合を気遣ってあげていれば・・・。」


ルドルフは申し訳なさそうに言う。


「いいのよ、ルドルフ・・・。冬になればいつもの事だから・・気にしないで?それに・・・。」


ヒルダはそこで少し悲し気に目を伏せた。


「それに・・?何ですか?」


「あ、あの・・本当は杖を持ってくれば良かったのかもしれないけど・・杖をついた私と一緒だと・・ルドルフに恥ずかしい思いをさせてしまうのじゃないかと思って・・。持ってこなかったの。だから・・私がいけないのよ。」


最後の方の声は消え入りそうだった。


その言葉を耳にした時、ルドルフは胸が詰まりそうに苦しくなった。そんな辛い思いを抱えていたのかと思うとヒルダが気の毒でならなかった。


「ヒルダ様、僕は・・。」


そこまで話した時、ウェイトレスが大きなカップに湯気の立つココアを持ってやってきた。


「お待たせ致しました。」


そして2人の前にコトンコトンと置いていく。


「ごゆっくりどうぞ。」


ウェイトレスは頭を下げると去って行く。それを見届けるとルドルフは言った。


「ヒルダ様、どうぞ温かいうちに飲んでみて下さい。」


「ええ、そうね。飲んでみるわ。」


ヒルダはカップを両手で持つとフウフウと冷ましながらコクリと一口飲んでみた。

途端に甘い味と香りが口の中で広がる。


「甘い・・とっても美味しいわ・・・。」


ヒルダは笑みを浮かべた。ルドルフもココアを飲むとヒルダに言った。


「ヒルダ様・・・僕は例え、ヒルダ様の足が不自由だろうと、杖を突いていようと・・少しも構いません。だから・・そんな悲しい事は言わないでください。」


「ルドルフ・・。ありがとう・・。」


ヒルダは目を潤ませながらルドルフを見つめた。


「ヒルダ様、今度出掛ける時は馬車かバスを使いましょう。それに杖も・・僕の事など気にせずに持ってきてくださいね。」


「ありがとう・・ルドルフ。本当に私が・・・普通の足だったら良かったのだけど・・・。」


ヒルダは寂しげに言った。


「僕はヒルダ様の傍にいられるだけで満足ですからそんな事気にしないで下さい。それで・・話は変わるのですが・・。」


ルドルフはテーブルの上に置かれたヒルダの右手をそっと握り締めながら言った。


「ヒルダ様・・・来週の土曜日・・僕と旅行に行きませんか?」


「え・・・?」


ヒルダはルドルフの申し出に目を見開いた―。



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