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第11章 3 ヒルダの帰郷 3

「え・・・ライラック・・・?」


エドガーは一瞬戸惑ってしまったが、アンナが目配せしている姿に気付き、すぐに納得が言った。


(そうか・・・『カウベリー』にいる間は偽名を使う事にしたんだな・・。)


そこでエドガーは笑みを浮かべると言った。


「ようこそ、ライラック嬢。フィールズ家の次期当主として心から君を歓迎するよ。さぁ、3人とも・・寒かっただろう?応接室を温めているから案内するよ。アンナ嬢も・・コゼットもご苦労だったね。」


するとアンナは頬を赤らめた。


「いいえ、エドガー様。とんでもありませんわ。」


ヒルダはアンナが頬を赤らめながらエドガーを見つめる姿を見て思った。


(アンナ様・・・本当にお兄様の事をお好きなのね・・。アンナ様はとても良い方だからお兄様と幸せになって欲しいわ・・。)


「さぁ、ライラック様。それではお言葉に甘えて応接室へ行きましょう?」


アンナはヒルダの方を振り向いた。


「ええ、そうですね・・・。」


そしてヒルダは2年ぶりの我が家へ足を踏み入れた―。





 応接室に入るとそこには既に真っ白なテーブルクロスがかかった大きな円形のテーブルの上にお茶の用意がされていた。

アンナはテーブルの上のフルーツケーキを見て嬉しそうに声を上げた。


「まあ・・・エドガー様。これは・・カウベリーのケーキですか?」


「ああ、そうだよ。紅茶もカウベリーの紅茶だ。アンナ嬢はカウベリーが好きだっただろう?」


本当はヒルダの事を思って用意したのだが、今回ヒルダがフィールズ家に来ることが出来たのは全てアンナのお陰だ。だからエドガーはアンナを立てる事にしたのだ。


「え?それじゃ私の為に用意して下さったの?」


アンナは瞳をキラキラさせてエドガーを見た。


「勿論そうだよ。」


笑みを浮かべながらヒルダの様子をエドガーはチラリと見たが、ヒルダは別段気にも留めない様子で部屋の中を見渡しながら思った。


(本当に・・・2年前と何もかも変わっていないわ・・。あの暖炉に飾ってある時計も・・カーテンも壁紙も・・。)



「さて、それじゃ皆好きな席へ座ってくれ。今お茶をいれるから。」


「まぁ・・・エドガー様自らがお茶をいれて下さるのですか?私がお淹れ致しましょうか?」


コゼットが言った時・・。


「あ、あの・・・私に淹れさせて下さい。」


ヒルダが遠慮がちに言った。


「そうだわ。ライラック様に淹れて頂きましょう。」


アンナは嬉しそうにパチンと手を叩いた。


(ヒルダの淹れてくれたお茶か・・・。)


「そうだな・・・それではよろしく頼むよ。」


エドガーに言われてヒルダは返事をした。


「はい。」


そしてヒルダはティーポットにカウベリーの茶葉を入れると、ケトルカバーを外し、お湯を注いだ。そこから数分間蒸らし、4人分のティーカップに抽出されたお茶を注ぐ。すると部屋の中に紅茶の良い香りが漂い始めた。


「・・・上手なものだな。」


慣れた手つきで紅茶を注ぐ様子を見て、エドガーがポツリと言う。


「ありがとうございます。」


ヒルダは軽く頭を下げた。


「それではライラック様の淹れて下さった紅茶・・頂きますね。」


アンナはカップを手に取り、フウフウと冷まして一口飲むと言った。


「フフ・・・とても美味しい紅茶ですね。ライラック様は紅茶を淹れるのがお上手ですね?」


そして笑顔をヒルダに見せた。


「ありがとうございます。」


「ええ、私も本当にお上手だと思います。」


コゼットも美味しそうにお茶を飲んでいる。


「ああ・・本当に美味しいよ。ありがとう・・・。」


エドガーはヒルダの瞳をじっと見つめると言った―。




 やがてお茶の時間が終わるとエドガーが言った。


「それでは皆・・少しだけこの部屋で待っていてくれるか?今・・母に声を掛けて来るので。」


エドガーは立ち上がると言った。そこへアンナが声を掛ける。


「あの、エドガー様。ハリス様は・・・今御在宅なのですか?」


「いや・・・父は今商工会の会合に参加しているんだ。帰りは夜になるから・・・何も遠慮する事はないよ。」


エドガーは意味深な言葉を使い・・そしてヒルダの瞳を一瞬見ると言った。


「すぐに戻るから・・待っていてくれ。」


そしてエドガーは3人を残すと部屋を出て行った―。



 

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