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第10章 10 カウベリーからの電話

 その日の夜7時―


ヒルダとカミラが仲良く食事を取っていると、コンコンとドアノッカーが叩かれる音が玄関から聞こえてきた。


「あら?お客様かしら・・・?」


ヒルダが首を傾げると、カミラが立ち上がった。


「あ、宜しいですよ。ヒルダ様。私が対応しますから、ヒルダ様はどうぞお食事を召し上がっていて下さい。」


「そう?ありがとう、カミラ。」


ヒルダが礼を言うと、カミラは笑みを浮かべて玄関へと向かった。


「どちら様ですか?」


カミラが中から声を掛けると返事があった。


「私よ、カミラッ!」


それはカミラの姉の声だった。


「まあ・・姉さん?!」


カミラは慌ててドアのカギを開けると、そこには肩からストールを掛け、荒い息を吐いてカミラの姉がそこに立っていた。


「ね・・・姉さん・・どうしたの?そんなに慌てて・・・。」


「そ、それが・・・ヒルダ様のお兄様からお電話が入っているのよ!」


「え?!何ですってっ?!」


するとそこへ玄関での騒ぎを聞きつけたヒルダが足を引きずりながら玄関へ現れた。


「あ、あの・・・お兄様から電話なのですか?」


するとカミラの姉はヒルダを見ると言った。


「ええ、そうなのです。今電話口でお待ちになっております。すぐにいらしていただけますか?」


「は、はい、分かりました。」


ヒルダは返事をするとカミラに言った。


「ごめんなさい、カミラ。先にお夕食頂いていて?私・・お兄さまとお話してくるので。」


「はい、分かりました。ヒルダ様。」


カミラが返事をすると、ヒルダは頷き、廊下のフックに掛けておいたコートを羽織るとカミラの姉に案内されて玄関を出た―。



 カミラの姉の住む家は2階でワンフロア全体が家となっていた。


「さあ、ヒルダ様こちらへどうぞ。」


カミラの姉はすぐに玄関のドアを開けてヒルダを中に招いた。


「お邪魔致します・・。」


ヒルダはそのまま中に入るとリビングへ通された。壁に掛けられている電話機の受話器が外され、電話機の下に置かれたサイドテーブルの上に乗せられている。


「どうぞ、ヒルダ様。」


「はい・・ありがとうございます・・。」


促されたヒルダは受話器を取ると、送話器に向かって話しかけた。


「お兄様・・お待たせ致しました・・。」


『ヒルダかっ?!元気だったか・・・?』


すると受話器越しから懐かしいエドガーの声が聞こえてきた。


「はい、お兄様・・・・。」


思わず胸が熱くなり、ヒルダは声を震わせながら返事をした。


『ヒルダ・・・いきなりの電話で驚いただろう・・?』


エドガーは優しく語り掛けてくる。


「ええ・・驚きました。あの・・・何かあったのですか?ひょっとしてお母さまの様態が・・?」


ヒルダは胸をドキドキさせながら尋ねた。


『ああ・・確かに母の状態はあまりよくない・・・実はその事で電話を掛けたんだ。ヒルダ、明後日・・カウベリーに一度戻って来い。』


ヒルダはエドガーの言葉に耳を疑った。


「そ、そんな・・・お兄様・・それは無理です・・・だって私は・・お父様から二度と帰ってこないように言いつけられていますし・・何より『カウベリー』の人たちに知られたら・・。」


最後の方は消え入りそうな声になってしまった。ヒルダはカウベリーの事を思い出し・・胸が張り裂けそうになってしまったのだ。


『大丈夫だ・・・ヒルダ。実はね・・俺の婚約者のアンナ嬢がとても良い方法を考え付いてくれたんだ。今変わるから話をしてくれ。』


「え?お兄様?」


すると次の瞬間・・・。


『こんばんは。ヒルダ様。初めまして。私はエドガー様の婚約者のアンナと申します。実は・・この度エドガー様からヒルダ様の詳しい事情を教えて頂きました。そこでヒルダ様をマーガレット様に会わせてあげられる素晴らしい方法を思いついたんです。』


「え・・?」


そしてアンナは語りだした。それはヒルダに取って驚くべき提案だった。




****


 電話を切るとアンナは言った。


「ヒルダ様・・・明後日『カウベリー』に来ることを了承してくれましたわ。」


「そうか・・・良かった・・。」


エドガーは安堵の溜息をつくとルドルフを見た。


「ルドルフ・・本当にこれで良かったのか?ヒルダに君の名前を出さなくて・・。」


「はい、これでいいんです。どうか僕の事は内緒にしておいて下さい。後、ヒルダ様が滞在中は僕はこちらにはうかがいません。そして僕の事も伏せておいて下さい。」


「しかし・・・。」


エドガーが言い淀むと、ルドルフは言った。


「いいえ、お願いです。ヒルダ様からは・・なるべく僕という存在を消しておきたいのです。」


そしてルドルフは頭を下げた―。

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