第2章 4 ルドルフとグレース
放課後―
ルドルフは急いで帰り支度をしていた。するとそこへグレースがやって来ると声を掛けて来た。
「ねえ、ルドルフ、今日は文法の勉強を教えてくれる？」
大きなリボンを揺らしながら、グレースは少しはにかんだ様子でルドルフにねだって来た。
「その事なんだけど・・・ごめんね。グレース。僕はもう君の家庭教師をする事は出来ないんだ。」
ルドルフは申し訳なさそうにグレースを見た。
「ええっ？！ど、どうしてなの？ルドルフ！」
グレースは涙目になってルドルフを見上げた。
「うん・・父さんからヒルダ様の馬術練習に付き合うように言われているんだ。2週間後にヒルダ様も参加する馬術大会があるんだよ。今迄父さんがヒルダ様の練習に付き合っていたのだけど、ヒルダ様がこれ以上迷惑を掛けられないと言って断って来たらしいんだ。それで今1人で練習をしているそうなんだけど・・・まだあまり上達していなくて父さんは心配なんだって。」
「それで・・ルドルフが替わりにヒルダさんを見る事になったの・・・？」
「うん。そうだよ。だから僕がグレースの家庭教師をするのも昨日で終わりだよ。それにグレースはもう僕が教えなくても勉強十分に出来るようになったよ。安心していいよ？」
ルドルフは笑顔で言うが、グレースの顔は曇った。
「そ、そんな・・・・私まだまだ分からない勉強が沢山あるのよ。このままじゃ来年怖くて高等学校へ行く事なんて出来ないわ・・・。」
「グレース・・・。」
「そ、それにそのヒルダ様は自分一人で乗馬の練習をするって言ったのでしょう？だったら別にこちらから手を貸す事は無いと思わない？」
「でも・・本心ではヒルダ様はきっと1人で練習するのは怖いと思ってるはずなんだ。だから・・あまりそう言う言い方は・・良くないと思うよ？ヒルダ様は周りに気を使って助けを求められないだけだと僕は思うんだ。」
「ルドルフ・・・。」
グレースはルドルフが自分の事を冷たい人間だと思って見ているようで気が気では無かった。
（そんな・・・ルドルフはどうしてヒルダ様に構おうとするの？もしかしてルドルフはヒルダ様の事を好きなの・・？）
「どうしたの？グレース。顔色が悪いみたいだけど・・・？」
「え、ええ・・。ねえ、ルドルフ・・・。もし・・私が具合が悪くて家まで送ってとお願いしたら・・・？」
グレースは上目遣いにルドルフを見た。
「いいよ、送ってあげるよ。それじゃ一緒に帰ろうか？」
ルドルフは笑顔でグレースの鞄を持つと言った。
「ルドルフ・・・。」
（やっぱりルドルフは優しい！そうよ・・ルドルフがヒルダ様に親切にしているのは・・ヒルダ様に気があると言う事では無くて・・・・誰にでも優しいからよ。だからヒルダ様も勘違いするんだわ。）
グレースはルドルフの後ろを歩きながら、どうすれば2人の仲を引き離す事が出来るのかを考えていると、突然ルドルフが振り向いて声を掛けてきた。
「グレース。2週間後に開催される馬術大会を見に来ない？」
「え？私が・・・？」
「うん、聞いた話によると参加者は全員貴族じゃないと出られないんだけど、見学は自由に出来るらしいんだ。それで実はね、イワンやコリン、ノラにも声をかけてあるんだよ。」
（そ、そんな：他の3人にはとっくに話をしていたのに、私にだけは話してくれていなかったのね・・・。何故なのルドルフ？やっぱり・・私・・・ルドルフの特別な人になりたい。）
グレースは心に決めるのだった—。
