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第7章 11 オリエンテーリング ⑧

 結局、マイクはあの後どこかへ行方をくらまし、部屋に帰ってきたのは夕食前だったと言う。その話をヒルダが聞かされたのは夕食の食堂での席だった。


「ええ?!その話・・・本当なのっ?!」


驚いたように声を上げたのはステラである。


「そうなのよ!それにしても・・私は1年の時マイクとは違うクラスだったから良く知らないけど、マイクってああいう自分勝手な人だったの?」


マドレーヌがステラとエミリー、そしてヒルダを見渡すと尋ねてきた。


「そうね・・・そんなひねくれた性格じゃなかったわ。」


エミリーはローストチキンを飲み込むと言った。


「私は・・良く分からないわ・・・。でも実は以前から少しマイクの事は怖いなって思っていたの・・。」


ヒルダは小声で言った。するとマドレーヌが言う。


「大丈夫よ、ヒルダ。マイクは今食堂にいないわ。いくら自由行動時間だったとはいえ、勝手にグループを抜け出していたのよ?しかもクラス委員長のくせに。だから今頃は先生たちにたっぷり油を搾られている頃よ。」


「そうなの?でも・・ますます逆恨みしたりしないかしら・・。」


ヒルダは心配そうにスープを口にした。その時―

突然、食堂が騒がしくなった。みるとマイクが先生方に連れられて食堂へ戻ってきたのだ。マイクは随分とやさぐれた表情をしていた。


「何だか怖い雰囲気よね・・。」


エミリーが言う。


「ええ・・本当ね・・。」


ヒルダはそっとマイクの事を見ると、あろうことか2人の距離は離れているにも関わらず、マイクとヒルダは目があってしまった。


「!」


慌てて視線を反らすヒルダ。何故ならマイクはヒルダと目があうと、ニコリと口元に笑みを浮かべたからである。


(嫌だ・・・怖い・・っ!)


ヒルダはドキドキしながら、何とか平静を装った。


「ねえ・・どうしたの?ヒルダ・・・大丈夫?」


しかしステラには異変を気づかれてしまった。


「本当だわ・・・顔色が真っ青よ?何かあったの?」


エミリーも心配そうにヒルダを見つめている。


「何かあったの?」


マドレーヌが尋ねてきたので、ヒルダはヒュウッと深呼吸すると言った。


「あ、あの・・・一瞬だったけど・・・マイクと目があってしまったの・・。」


「え?!あんなに離れた場所なのに?」


ステラは思わず大きな声を上げてしまった。何故ならヒルダ達の席から食堂の入り口までは50m程は離れていたからである。

ヒルダからは先生方に連れられて食堂に入ってきたのはマイクだと判断しやすいが、一方のヒルダは着席し、大勢の生徒たちに混ざって食事をしていたのだから、見つける方が難しい。それなのにマイクはいとも簡単にヒルダを見つけてしまったのだ。


「マイクって・・本当に怖い人ね・・・。ヒルダ、実はね・・・私いつも護身用に笛を持ち歩いているのよ。これ・・貸してあげるわ。」


ステラはポケットをガサゴソと探すと手のひらに乗るほどの大きさの笛を手渡してきた。


「ヒルダ、これはね『呼子』って呼ばれている笛なの。私はいつも予備で2個持ち歩いているのよ。これは未使用なの。ヒルダに預けておくわ。」


「ステラ・・・。」


ヒルダは笛を受け取るとステラを見た。


「いい?明日・・オリエンテーリングで何かあったら・・この笛を吹くのよ?」


「ありがとう・・・ステラ。」


ヒルダは笛をしっかりと握りしめた。





「ここ、いいかな?」


ルドルフが1人でテーブルに向って食事をしていると、突然向かい側の空席にマイクがトレーを持って現れた。


「どうぞ・・。もう食べ終わる頃だし。」


ルドルフは最後に残ったパンを食べ終えると、トレーを手に立ち上がった。


「ええ?もう行ってしまうのかい?折角君と2人で話が出来ると思ったのに・・。」


しかしルドルフは言った。


「・・・あいにく、僕は君と話す事は無いんだ。」


そして立ち去ろうとするルドルフにマイクが言った。


「明日のオリエンテーリング・・・楽しみだね。」


「!」


その言葉に素早く反応したルドルフがマイクを見ると言った。


「・・・彼女におかしな真似をしたらただじゃおかないからな・・・。」


「おかしな真似って?」


しかしマイクはルドルフの言葉を気に留めずに言った。


「別に・・・。」


「・・・。」


少しの間、ルドルフはマイクを睨みつけていたが・・やがてトレーを持つと立ち去って行った。そしてそんなルドルフの後ろ姿をマイクは黙って睨みつけるのだった―。


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