第6章 11 不吉な予感
その日の昼休み―
マイクは職員室に呼ばれていた。
「え?オリエンテーリングですか?」
「ああ、そうだ。毎年2年生に実施されている行事なんだ。目的は親睦を深める為と、どのクラスがチームワークが良く、優れているかを競うレースでもあるんだ。どのルートを通れば最短時間で目的地に到着できるか作戦を練ってクラス対抗で行う。我々は特進クラスだから、尚更他のクラスには負けられないからな。午後の最初の授業は本日はオリエンテーリングに向けてのホームルームを行うからマイク、進行役をやってくれ。日程は2週間後、2泊3日で船でキャンプ場として使われている小島に行く事になっている。そこは宿泊施設が充実しているから君たちは着がえと洗面具だけ持って行けばいい。そうそう、学校指定のトレーニングウェアは必要だけどな。ちなみに2人ペアで行われる。組み合わせは男女自由だ。」
そして担任教師であるブルーノは冊子になっている資料をマイクに手渡した。
「すまないな。昼休みに呼び出したりして・・次のホームルームの時間までにその資料に目を通しておいてくれ。」
「はい、分かりました。」
マイクは資料を受け取ると、職員室を後にした。
「オリエンテーリングか・・・。何て素晴らしい行事なんだろう。これで僕とヒルダが親睦を深めることが出来るぞ・・。」
そしてマイクは早速頭の中で筋書きを考え始めた―。
「ねえ、ヒルダ。マドレーヌ。ってる?再来週・・・私たち島へ渡ってオリエンテーリングの合宿を行うのよ。」
カフェテリアのランチの席でエミリーが言った。
「オリエンテーリング?」
ヒルダは首を傾げた。
「ええ。そうよ。私達のクラスでは午前中にホームルームでこの話が出たの。それにしても随分急な話よね。クラス分けしたばかりなのに。」
ステラと同じクラスになったエミリーはフォークにくるくるとクリームパスタを巻き付けながら言う。
「あら、この時期だからやるのよ。クラスの親睦を深める為だって。」
ステラはエッグマフィンを食べ終えると言った。
「オリエンテーリングを受ける島の名前・・聞いてるかしら?」
マドレーヌは真剣な顔でエミリーとステラを見た。
「ええっとね・・・確か・・『ニトル』って小島だと思ったわ・・。」
「ニトル・・・。確かあの島はキャンプ場として人気がある島だって聞いたことがあるわ。美しい渓谷や滝があるんですって。」
マドレーヌがスコーンにジャムを塗りながら言った。
「オリエンテーリング・・・私は不参加でもいいのかしら・・。」
ヒルダがポツリと言う。
「どうしたの?ヒルダ。」
ステラがヒルダに尋ねた。
「ええ・・・。コースによっては足場が悪い場所を歩かなければいけないのでしょう?そしたら・・皆に迷惑がかかるかもしれないもの・・・。」
「ヒルダ・・・・。」
ステラがヒルダに同情するかのように眉を寄せた。
「ええ、そうよ。先生に事情を離せばきっと学校側だって分かってくれるはずよ。大丈夫だってば。」
マドレーヌがヒルダに言った。
「なら・・・いいんだけど・・。」
「そうよ。だってテストみたいに個人の成績が付くわけじゃないんだから。」
エミリーもヒルダに声を掛けた。
「ええ・・そうよね・・そんなに心配することは無いわよね。」
ヒルダは自分に言い聞かせたが、それでもまだどこかで不安な気持ちがあった。そして次のホームルームの時間・・ヒルダの嫌な予感が的中するのだった―。




