第6章 3 エドガーとルドルフ ②
「そうか・・やはりヒルダと・・知り合いだったのか・・。」
エドガーがポツリと言うとルドルフは顔をあげた。
「え・・?エドガー様は・・ヒルダ様の事を御存じなのですか?」
「ああ・・。ここだけの話だが・・俺はヒルダに会って来てるからな。この話を知ってるのは俺と母だけなんだが・・・。」
「え・・?!ヒルダ様に会って来たのですか?!い、一体ヒルダ様は今何所にいらっしゃるのですか?!」
その時になって、初めてルドルフは感情を露わにした。エドガーはそのあまりの変貌ぶりに驚いた。
(何だ・・・彼は・・人並みの感情を持っていたと言う事か?やはりヒルダと何か関係があるんだな・・?)
「お願いですっ!ヒルダ様は・・今何所にいるのですか?教えてくださいっ!」
ルドルフはエドガーに必死では頭を下げて懇願する。
「ちょ、ちょっと待ってくれ・・・その前に・・・ルドルフ。君は・・・一体ヒルダとどんな関係があるんだ?」
するとルドルフは俯くと身体を震わせて言った。
「僕は・・・僕とヒルダ様は・・・婚約していたんです・・・。」
「え・・?こ、婚約・・・?!」
エドガーはルドルフの言葉にショックを受けた。何故ならエドガーはヒルダの事を妹としてではなく、異性として愛していたからである。
「そ、それは・・いつの話なんだ・・・?」
エドガーは声を震わせて尋ねた。
「僕と・・ヒルダ様が中等部の3年生・・15歳の時です。」
そして、ルドルフは自分がヒルダと婚約を結び、破棄になり・・そしてヒルダと別れてしまう事になった経緯をエドガーに話した。
エドガーはその話を無言でじっと聞いていたが、内心は激しく動揺していた。
(そうか・・・ヒルダは・・・ルドルフと愛し合っていたのか・・だけど、あの火事のせいで・・・決別したんだ・・。)
そんな壮絶な経験をしていれば、ヒルダが感情を失ってしまっても無理は無いと思った。そしてルドルフの話で、以前のヒルダは笑顔が良く似合う美しい少女だった事も知った。
「・・・。」
ルドルフの話を聞いたエドガーは暫くの間、沈黙していたが・・やがて口を開いた。
「ヒルダは・・今『ロータス』と言う大きな都市でセロニア学園高等学校という進学校に通っているんだ。」
「セロニア学園高等学校・・・。」
ルドルフは口の中で小さく呟き・・・エドガーに言った。
「ありがとうございます。エドガー様。僕は用事が出来たのでこれで失礼致します。」
ルドルフは丁寧に頭をさげるとエドガーの自室を後にした。エドガーは溜息をつくと
椅子の背もたれに寄りかかり・・・初めてヒルダに出会った時の事を思い出した。
エドガーとヒルダが初めて出会ったのはエドガーが5歳、ヒルダが4歳の時だった。
フィールズ家の遠縁にあたり、子爵家の3男として生まれたエドガーは年が近いと言う事でヒルダの誕生パーティーに呼ばれた。そのパーティー会場で2人は初めて出会ったのである。その時、エドガーは可愛らしいヒルダを見て、その場で好きになってしまった。しかし2人が出会ったのはその時だけで・・・次に再会した時には皮肉な事に兄と妹という立場になってしまっていた・・・。そしてヒルダはエドガーの事を全く覚えていなかったのだ。
「多分・・ルドルフはヒルダに会いに行くのだろうな。ルドルフ・・・妹ヒルダをよろしく頼むぞ。」
そしてエドガーは再び勉強を始める為にデスクへ向かった―。




