表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

122/563

3章 1 謹慎処分明けの登校

「ヒルダ様、行ってらっしゃいませ。」


朝、カミラはヒルダを玄関まで見送りに出てきた。


「ええ。行ってくるわね、カミラ。」


そしてヒルダはカミラに手を振ると玄関を後にした。

アパートメントの入り口を出ると、ヒルダは驚いた。目の前に馬車が止まっていたからである。


「え・・?この馬車・・もしかして・・。」


すると・・・。


「ヒルダさんっ!おはようっ!」


馬車の窓からステラが顔をのぞかせたのだ。


「え・・?ステラさん・・・?何故ここに・・?」


するとステラは一度窓から顔を引っ込めると、すぐに馬車のドアが開いた。


「さあ、乗って。ヒルダさん。」


ステラは笑顔でヒルダに手を伸ばした。しかし、首を振るとヒルダは言う。


「ごめんなさい、ステラさん。せっかくお迎えにきてくれたようだけど・・私、足のリハビリの為になるべく歩くようにしているの。保険医のアレン先生にも足を動かすように言われているから。」


「え・・?そうなの・・・?」


「ええ、だからステラさんは私に構わず馬車で学校へ行って。」


しかし、ステラは馬車から降りてしまった。


「それならヒルダさんが学校まで歩いていくというなら、私も一緒に歩くわ。」


しかし、ヒルダは言った。


「それはダメよ、ステラさん。だって折角御者の方が連れてきてくれているのに、途中で帰ってもらうのは何だか申し訳ないわ。」


「確かに・・ヒルダさんの言う通りかも・・・。」


(私って・・なんて自分本位な人間なんだろう・・・。)


途端にステラは自分のことが恥ずかしくなってしまった。なのでヒルダにお礼を言った。


「ありがとう、ヒルダさん。気づかせてくれて・・。貴女のおかげで少し大人になれたわ。」


そしてステラは再び馬車に乗り込むと、窓から顔をのぞかせた。


「それじゃ・・ヒルダさん。また学校でね。」


そして手を振ってきた。


ヒルダも黙って手を振ると、ステラは嬉しそうに笑みを浮かべ、御者に言った。


「馬車を出してくれる?」


「はい、わかりました。」


帽子を目深にかぶった御者は返事をすると馬車を走らせ、あっという間にヒルダの前から去って行った。


「ふう・・・。」


ヒルダは溜息をつくと、馬車や人通りの激しい大通りを通り抜けて学校へと足を引きずりながらゆっくりと向かった―。




 ホームルームの始まる5分前―


ガラガラガラ


引き戸を開けて、ヒルダは自分のクラスへ入ってきた。するとクラス中の視線が一気にヒルダに集中する。しかし、ヒルダはその視線をものともせずに、静かに教室の中へ入っていくと・・・。


「ヒルダさんっ!」


ガタンと自分の席を立ち、ステラがヒルダの元へ駆け寄ってきた。


「良かった・・間に合ってくれて。もし遅刻したらどうしようかと思っちゃった。」


ステラが胸をなでおろしながら言う。


「大丈夫よ。ちゃんと時間を考えて家を出ているから。」


ヒルダは答えると、コートを脱いで丁寧に畳み、自分のロッカーにしまった。そしてかばんを持って自分の席へ行くと、カタンと椅子を引いて座り、カバンの中から教科書やノート、筆記用具等を出して机の引き出しにしまっていく。



 ヒルダのその様子をフランシスはじっと見つめていた。

フランシスは本当はヒルダが教室に入ってきた直後に挨拶に行きたかった。しかし、ステラが先にヒルダの元へ行ってしまったので、声を掛けるチャンスを失ってしまったのだ。


(まあいいか・・・ホームルームが終わったらすぐにヒルダの所へ顔を出しに行けばいいんだから。)


そしてヒルダをじっと見つめると思った。


今日のヒルダもやはりとても美しいな・・と―。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ