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猫にひかれて異世界生活 みじかい尻尾  作者: PYON
第二話 御子神蒼生の話
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御子神蒼生05

「あと仕事だが、あきかんを拾うとか段ボールを集めるとかで、小銭は稼げる。

 あとめぐんでくれる人も案外いるんだ。

 説教とセットになっているけど。

 やつらは俺たちを見て優越感に浸りたいんだ。l

 だから、ひけめを感じる必要はない。

 大袈裟にお礼でも言えば、それだけで彼らは満たされる。

 まあ、ボランティアだな」

 皮肉っぽく笑う。

 

「働くのもありだが、ホームレスじゃ、ろくな仕事はない。

 まず、会社は直接俺たちを雇わない。

 きちんと誰に給料を払ったか記録しないとならないからだ。

 保険とか税金とかやっかいな問題がある。

 結局、このままじゃ生活保護も受けられない。

 だから、いかがわしい人材派遣で働くこととなる。

 それはきつい仕事が多いし、相当中抜きされてしまう。

 あんまりおすすめじゃないね。

 あとは自分で考えることだな」

 

「ありがとうございます」

 ぼくはお礼を言って立ち上がる。

 今日は炊き出しもあるらしい。

 ぼくは、段ボールの上に毛布をたたんで腰掛ける。

 ぼくの横にはハナ。

 先生からハナ用にパンをもらう。

 ぼくの横でパンくずを食べるハナ。

 先生はここの暮らしも悪くないと教えてもらったが、ぼくはあがいてみようと思う。

 

 そう、ハナにはパンとか人間の食べるものばかりを食べさせるわけにはいかない。

 自己破産をしているから借金はないし、失うものはない。

 だから、とりあえずはここを拠点として、頑張ってみようと思う。


 昨日まで死のうと思っていたのに、なんかやる気が出てきた。

 これも全部横で毛づくろいをしている毛玉のおかげだ。

 まだ、身なりが綺麗なうちに手続きをしよう。

 役所って9時からだったっけ。

 

「行ってくるね。ハナ」

 ぼくはそう言って、役所に向かう。

 本当はハナに首輪でもつけられたらいいんだけど、そんなお金もない。

 たぶん、この子は賢い子だ。

 おとなしく待っててくれるだろう。

 ぼくはハナの頭を撫でる。

 ハナはミーと返事をするように鳴く。

 たぶん、先代ハナと同じように人間の言葉がわかるのだろう。


 ぼくは市役所で手続きをする。

 かなり、いろいろ聞かれる。

 特にひきこもっていた時のこと。

 それはぼくにとってとても辛い記憶だった。

 前のぼくなら机でも叩いて飛び出したことだろう。

 でも、異世界でのこと、ハナのこと、いろいろ考えて我慢することができたのだった。

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