御子神蒼生02
とりあえず寝床を確保しないと。
ぼくは、懐にハナを入れる。
都会にはおちこぼれの吹き溜まりがある。
風の吹き溜まりに落ち葉が集まるように、ぼくたちは集まるのだ。
そこは雨風が防げる場所、そして情報が集まる場所だ。
ぼくは駅の近くの大きな公園に行く。
ホームレスの人が段ボールやビニールでテントを作っている。
ぼくは空いてるところを探す。
「若いのここは初めてかい?」
ひとりのおじさんが話しかけてくる。
「はい、すみません。
どうしていいかわからなくて」
「そうか。
まだ身なりが俺たちと違うからな。
でも、すぐに慣れるさ」
「ここってどこで寝てもいいんですか」
「ああ、荷物が置いてあるところを除いてな。
でも、少しくらいならつめてくれるよ。
そうだな、あそこなら空いてるよ」
おじさんは少し開いているスペースを指さす。
ぼくは、そこに座りこむ。
今日はここで寝よう。
子猫のおかげでさっきより暖かい。
「ほら、これを使え」
ぼくの前に何枚かの段ボールと新聞紙が置かれる。
ぼくが見上げると、何人かのおじさんがぼくを見下ろしている。
「それから、これもやる。
段ボールを敷いて、これに包まるんだ。
それから段ボールの中に入る。
新聞紙を巻いてもあったかいぜ」
「ありがとうございます」
「いや、ここで死なれると大変だからな。
警察が来て、追い払われる。
簡易宿泊所を使えっていうんだよ。
あいつら現実が見えてないからよ。
まあ、ここのことは俺らに聞きな」
「ええ、よろしくお願いします」
そういうと、みんなはぼくから離れていく。
たぶん、この人たちはぼくと同じ、人と接するのが苦手な人たちだ。
でも、最低限のやさしさでぼくに接してくれたんだ。
ぼくは、おじさんたちが言うようにする。
確かに暖かいや。
ぼくは、久しぶりに人の暖かさを感じながら、子猫と一緒に眠るのだった。