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猫にひかれて異世界生活 みじかい尻尾  作者: PYON
第二話 御子神蒼生の話
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御子神蒼生01

次は蒼生くんの話です。

 敵の話ばかりですみません。

 でも、蒼生くんは敵の中でもあまり憎めないキャラではないかなと思ってます。

 現実世界の話なので、まったく異世界やバトルとかありません。

 ごく普通におっさんが生活する話なので、飛ばしていただいても問題ありません。

 では。


 なんで、ぼくだけ、こんな目に。

 なにも悪いことしていないのに。

 でも、もうこの世界は辛すぎる、耐えられるとは思えない。

 だから、引き金を引こう。

 指が震える。

 なんで、ぼくは生きたいのか。

 こんな辛い世界で。

 こんなクソみたいな世界で。


 それとも。

 死ぬ勇気さえないのか。

 そんなことはない。

 ぼくは。


 引き金を引く。

 カシャンという音。

 でも、暗黒はやってこない。

 痛みもない。

 どういうことだ。


 ぼくは目をあける。

 先ほどと同じ冷たい世界。

 希望もなにもない、無機質な世界。


 ミー

 小さな鳴き声。

 そして、ベンチの下から小さな毛玉が這い出てくる。

 その毛玉はぼくの足に身体をこすりつける。

 ぼくはその毛玉を両手で包んで持ち上げる。

 毛玉はぼくを見つめて力なく鳴く。

 頭の部分が黒い八割れの子猫。

 過去にもこういうことがあった。

 ハナだ。

 まるで、ハナの生まれ変わりのような子猫。

 ぼくは、その震える身体を両手で包み込む。

 毛玉はその小さな命を預けるようにじっとしている。


 そういえば、パンの残りがあったな。

 ごそごそと鞄の中を探って、食べ残しの硬くなったパンを取り出す。

 それを小さくちぎって子猫に与える。

 猫にはこういうのよくないんだよな。

 でも、仕方ない。

 子猫は小さな口でパンくずに顔をうずめる。

 

 なんか、こいつを見てるとどうでもよくなってきた。

 っていうか、こいつのたくましさ。

 今日を生き延びても明日はまた飢えるかもしれない。

 なのに、こいつは必死で生きようとしているんだ。


 ぼくはこの小さな命をみて、もう少し生きてみようと思ったのだった。

 


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