コント女神の泉02
「つぎの相談は何?」
女神は、テキパキと仕事を片付ける。
「ナー」
次の陳情者、小さな灰色のモフモフが女神の前に座っている。
「あら、猫ちゃん。
どうちたんですかぁ」
女神は猫を抱き上げる。
「にゃん、にゃん、にゃん」
猫は女神に何かを説明しているようだ。
「うんうん、そうなの。
それは大変でちゅね」
女神は猫の言葉に相槌をうつ。
女神にとって猫語なんて簡単なものであった。
女神は猫でモフモフする。
「わかったわ。
その人たちを生き返らせればいいのね。
そんなの簡単なことよ。
任せておいて」
女神は猫の頭を撫でる。
猫はニャーと鳴いて目を細める。
「あの、女神さま、生き返らせるって…」
さっきの神が今の女神の言葉に反応する。
「え、だから、猫ちゃんのお友達を生き返らせるのよ。
何か文句ある?」
「いえ、先ほど自然の摂理に反するとか。
あの、例外をつくることはできないとか…」
「でも、猫ちゃんのお友達は、盗賊団から村を守ったのよ。
立派な人たちじゃない。
自分を犠牲にして、他人を守る。
賞賛に値するわ」
「しかし…」
「それにこれは猫ちゃんの頼みなのですよ」
この女神は普段は仕事ができるのに、猫のことになるとダメな人になるタイプなのだった。
まあ、猫好きあるあるだ。
灰色毛玉は女神に頭をこすりつける。
猫の最大の敬意の表し方だ。
そして次に女神エリルはまっすぐこっちを見る。
「それから、このお話の題名に『コント』ってつけたのは誰?
なかなかいい性格しているわね。
たしかにこの場面、服ってコントっぽいわね。
でもね。
この泉は、あなたたちの世界でいう、国会議事堂であって、最高裁判所よ。
そこでのやりとりをコントだなんてね」
女神はこっちを指さす。
「あなたよ。あ・な・た。
あなたにはね。呪いをかけてあげる」
女神は杖を振る。
「呪いをかけたわ。
どんな呪いかって?
あなたは、今後猫ちゃんのお話しか書けなくなる。
わかった?
じゃあ、そういうことで」
女神エリルはにっこり笑って、灰色毛玉の頭を撫でるのだった。
しかし、呪いをかけなくても、作者は猫ちゃんのお話しか書けないのだった。