聖剣士カルマ07
俺は街の入り口でマルテたちと合流する。
村の状況は旅の途中で聞けばいい。
俺は馬と馬車を用意する。
あと、積めるだけの物資、武器、薬品。
いままでの冒険ですこし蓄えがある。
俺の使うのは宿と食事と武器くらいだ。
俺の宝石袋の中には、そこそこのものがたまっているのだ。
その中の一つを売って、今回の準備にあてた。
本当なら依頼主が用意するものだが、あの親子には無理な話だ。
しきりにマルテたちは恐縮する。
「大丈夫だ。
盗賊団には賞金が懸けられている。
それも、黒蠍革命団はかなりの賞金首だ。
それは俺がもらう」
賞金が懸けられているのは本当だ。
それもかなりの額。
幹部を全員倒すとひと財産になる額だ。
軍隊を派遣しても制圧に1年程度かかるだろう。
それもかなりの犠牲も出るだろう。
それを考えたら、安い金額だろう。
しかし、それも宝くじにあたるよりも難易度は高いだろう。
この町の冒険者を全員集めたところで、たぶん1日と持たないだろう。
そんなレベルの相手だ。
共和国の闇の部分を牛耳るニャンギラスに次ぐアウトロー集団なのだ。
「それに、お前たちも戦わなくてはならない。
それも、勝てる可能性はほとんどない戦いなのだ」
下手に希望を持たしてはいけない。
向こうについても、全員に同じことを問うつもりだ。
本当は逃げた方がいい。
ただ、生き延びるには故郷だけでなくプライドも捨てなければならないのだ。
逃げるのもたぶん地獄の道となるだろう。
泥水をすすってでも生き延びる覚悟が必要だ。
それでも、革命団と戦うことと比べたら、格段に生き延びる確率は高い。
だからギルドの職員が言うことも間違いではないのだ。
いや、教科書的には正しい答えだと思う。
しかし、俺たちは人間なのだ。
生きていればいい、そうではない。
あくまで人間として生きなければならない。
死よりも忌避しなければならない生というのもあるのだ。
「うん、ぼくもがんばるよ。
村のみんなもたぶん同じだよ」
フェビル少年の言葉に、俺はほほ笑んで頷くのだった