烈火の魔女メアリー06
来た来た。
ここらへんって何もないから丸見えじゃん。
お城ってわけじゃないから、仕方ないよね。
農業するには平地のほうがいいに決まってるしね。
普通でいえば、守りにくいし攻めやすいってことだよね。
でもね。
魔法使いにとってはね最高。
爆裂魔法撃ち放題。
花火撃ち放題って感じ。
花火職人の血が騒ぐなんつってね。
普通こんなシチュエーションになることはない。
大概戦争って同じくらいの戦力でやるものだからね。
だから、戦争は混戦となる。
敵と味方が入り乱れた状況では、大規模魔法は撃てない。
味方も殺してしまうからね。
でも、今日は絶望的な戦力差。
だから、魔法使いにとっては願ったり望んだりだ。
とりあえず、ど真ん中に大きいのをお見舞いしてやるね。
わたしは掌を上にして天に手を上げる。
魔法陣が私の真上に展開する。
それを敵のほうに移していく。
魔法陣はだんだん大きくなる。
わたしの最高傑作を打ち込んで上げるね。
攻撃魔法は刹那の芸術。
いくらすごいのをお見舞いしても、その場限り。
残しておくことはできない。
だから語り継がれる。
氷帝カギヤ、炎王タマヤ。
比べることは出来ないけど、どんな風に語られるんだろうね。
先輩たちに負けないやつを見せてやらないとね。
残念なのは、この花火をカルマと一緒に見れないこと。
2人で見たらすごくいいだろうな。
お酒を飲みながら、敵がはじけ飛ぶのを見るの。
ドンって胸に響くような音が鳴って、カルマの横顔を光が照らすの。
そしてタマヤーとかカギヤーとか叫ぶの。
なんか、大魔法を見るとき大魔法師の名前を叫ぶことになっているの。
将来メアリーとか叫ばれるようになるのだろうか。
さてさて、そろそろ大きくなってきたね。
敵も近づいてきたしね。
敵も頭の上の魔法陣に気が付き始めた。
天を指さして何か言っている。
でも、もう遅いよ。
そうなったら、サイレントは効かない。
打ち消すくらいの魔法を撃ち込まないとね。
なんか、魔導士たちが詠唱をはじめる。
あいつらはこの魔法のやばさがわかっているんだろうね。
たぶん、バリアの魔法。
そんなの効かないってわかんない?
さて、そろそろかな。
わたしは魔法を発動する。
敵の真ん中で大爆発がおこる。
すこし遅れてわたしの胸に轟音が響くのだった。
「タマヤー、カギヤー」
わたしはそう叫んで手を叩くのだった。