剣士ケント11
「やめておけ、お前では俺に勝てない。
俺の技、破剣。これは特別な技ではない。
剣というのは横からの攻撃にすごく弱いのだ。
だから、攻撃を見切って、剣を横から払う。
そうすれば、なまくらな剣は砕ける。
まあ、ミスリルやオリハルコンはさすがに砕けないが、その場合は敵の手首が砕ける」
にやりと笑うメルキド。
兄貴ならどうするかな。
たぶん、嬉しそうに笑うんだろう。
じゃあ、お前を倒したら俺はもっと強くなれるって。
俺は、剣を持って跳躍する。
そう、より高くだ。
それしかない。
こいつの想像の上を行く高さとスピード。
すぐに最高到達点に達する。
そう、ここから加速できればいいんだけど。
空中には蹴るべきものはない。
ここでもう一度加速できたら。
そう思いながら、足で空中を蹴る。
えっ。
足が何かに当たる。
それもかなりしっかりした感覚。
もう一度、しっかりと蹴って上昇する。
いつもの倍の高さに舞い上がる。
そこから、剣を下に向けて落下する。
兜割りという技だ。
滑空して斬るのではない。
全体重で突くのだ。
ただ、この攻撃は避ければいい。
じっとまっている必要はないのだ。
とにかく、メルキドに向けて落下する。
少しくらいの微調整なら身体をひねることで可能だ。
メルキドは俺を見上げながら、落下地点をさぐる。
大きく逃げるのではなく、落下直後の隙を狙おうというのだ。
ほんとうに隙のない敵だ。
でも、やってみたいことがある。
兄貴と出会うまでの俺なら、たぶんあきらめていた。
でも、あきらめなかったから奇跡がおきたのだ。
空を駆ける能力が覚醒したのだ。
まだ自由にというわけにはいかない。
でも、あと一回だけなら使えるかもしれない。
俺は地上に落ちる直前でもう一度足場をつくり、それをメルキドに向けて蹴るのだった。