聖剣士カルマ06
黒蠍革命団、聞いたことがある。
共和国の政治体制に反抗する義賊を気取っているが、実際はただの盗賊団・
それも悪質なやつらで、やつらが通った後は雑草ひとつ生えないと言われている。
その上、共和国とは戦わず、弱い村を襲ったりする。
ただ、その規模は大きく、1000人を超える軍団だといわれている。
これくらいの規模になると冒険者の仕事ではない。
軍の仕事だ。
その黒蠍に狙われている村を救ってほしいという依頼だ。
それも報酬はマルテの持ってきた小銭だけ。
本当であれば逃げたほうがいい。
しかし、村人は逃げないという。
もう豪農など金のあるものは逃げだしたらしい。
あとに残されたのは、年寄や小作人など、弱いものだけだということだ。
いままでで一番困難な依頼かもしれない。
たぶん、盗賊団に勝つなんてできないだろう。
しかし、爪痕を残すことはできる。
「それは困難な依頼だな」
「ええ、しかしわたしたちにはこれしかないのです。
他に逃げてものたれ時ぬだけなのです」
そう、彼らは他に逃げたところで、幸せな未来は描けない。
旅の途中で難民の悲惨な現状も見たことがある。
彼らにとって生まれた地で死ぬこともひとつの選択肢として正しいのかもしれない。
「わかった。
おまえたちは戦う勇気はあるか?
俺だけではおまえたちを守り切れない」
「生きるためです。
なんでもやります」
「わかった。
依頼を受けよう。
ただ、この依頼、他の冒険者は受けないだろう。
だから、俺ひとりだ。
そして、俺だけではお前たちが戦うのを助けるのが精いっぱいだ」
「うん、ぼくも戦うよ」
フェビルが答える。
その頭を撫でる。
いい目をしている。
「では、明日、村に向かおう。
早い方がいい」
俺は彼らにそう言って、ギルドを出る。
そして、武器屋や道具屋で準備を整えるのだった。