剣士ケント08
高く飛んで滑空しながら斬る。
これが飛燕剣と言われる所以。
重力を利用することで力のなさもカバーできる。
剣を振ることも必要ない。
たくさん斬ることが必要なこの状況では、経済的とも言える。
相手の進軍は止まる。
とにかく、今起こっていることを把握しないとならない。
本当なら力押しをすればいいが、小隊長たちは不安を残せないのだ。
その中で俺は攻撃を繰り返す。
そう、こっちも知られるまでが勝負。
俺の攻撃方法が知られてしまえば、対策方法もある。
ただ、その時は別のやり方もあるのだが。
変幻自在はカルマ流の得意技だ。
こいつらは軍隊ではない。
革命軍とかいう山賊に毛が生えた程度のやつら。
少し山賊よりましかもしれないが、軍ほど統一されていない。
動きも基本ばらばら。
装備もばらばらだ。
自由なのはいいが、それは弱点ともなる。
特に装備が自腹なのは助かる。
それに傾奇者を気取って着崩している。
普通に統一された防具をきちんと着ていたら、もう少し苦戦するだろう。
しかし、こいつらは狩り放題だ。
さて、そろそろかな。
もう、30人くらいは斬ったはず。
俺を囲むのは中でも腕に覚えのありそうな奴ら。
そう、雑兵は引かせて、精鋭で俺を退治しようというのだろう。
たしかに、今までのやつらとは違う。
たぶん、傭兵とか今まで戦争に身をおいたことのある奴らだ。
すこしやっかいだが、倒せない敵ではない。
俺は鷹のように獲物を捉える。
そう、混乱の中では相手も本来の力を出せない。
思いっきり剣を振り回して味方を斬ってもいけない。
敵を味方が斬ろうとしているかもしれない。
長い武器ほど使いにくくなる。
どんどん目の前の敵は倒れていく。
そう、俺はひとりひとり確実に刺し殺していく。
「おまえら下がれ」
一人の男が全員を下がらせる。
筋肉質のひときわ大きな男。
身体から出るオーラから直観的に幹部だとわかる。
青い鎧をきちんと着こんでいる。
こいつは本物の剣士だ。
とりあえず、こいつを倒せば、戦意をそぐことができる。
俺は、剣士の前に出て不敵に笑うのだった。