聖剣士カルマ05
「ちょっと待てよ」
俺はさっきの親子に話しかける。
「なにか?」
父親が振り返る。
絶望的な顔をしている。
たぶん、いろいろなことを背負ってここまで来たんだろう。
「さっきの話、俺にも聞かせてくれないか」
「あなたは?」
「カルマって、冒険者だ」
「おじさん、強いの?」
子供が俺を見上げる。
期待に満ちた表情。
「ああ、強いぜ。
だから、話してみろ。
悪いようにはしない」
「お父さん。
このお兄ちゃんに話してみようよ」
「しかし、いくら強くてもこの人だけでは…」
父親は俺を怪訝な目で見る。
べつに俺は身体が大きい方ではない。
公称175㎝、たぶん実際はそんなにないだろう。
そして、身体も細いほうだ。
筋肉だけが強さではない。
しなやかであることが強さなのだ。
それに、俺は猫の眷属という不思議な力がある。
基本ステータスがこっちの世界の人より高いのだ。
「聞くだけだよ。
無理なら受けない」
「でも、ギルドは受けてくれないんでしょ。
このままじゃ。村のみんなは…」
「そうだな。
冒険者の方、失礼しました。
わたしたちはヴァルニールの村から来たマルテと申します」
村人は話を始める。
「その村が、盗賊団に狙われているのです。
隣の村はもう襲われて、すべて奪われました。
全員が殺されるか奴隷にされ、食べ物や金目のものは全部…
黒蠍革命団に…」
マルテはそう言って拳を握りしめるのだった。