暗殺者アイザック03
カルマは冒険者としてどんどん有名になっていった。
別にカルマが名声を求めたのではない。
人々がカルマを求めたのだ。
カルマの仕事の選び方は他の冒険者と違っていた。
他の冒険者は報酬の多さやランクにかかるポイントの多寡で仕事を決める。
カルマは困っている人がいる限りどんな不利な仕事でも受けるのだ。
最初冒険者の中でもカルマは馬鹿にされていた。
とにかく効率の悪い仕事ばかり受けるのだ。
最近のサーガで仕事人シリーズというのがある。
我々、暗殺者が民衆を虐げる貴族や王族を懲らしめるというストーリーだ。
それはすべてフィクションであり、実在の団体とは関係はない。
我々ははした金で貴族の暗殺などを引き受けることはない。
プロは正当な報酬なしには仕事をしない。
それなのに、カルマは報酬の低い仕事、困難な仕事をすべて受け付けてしまうのだ。
最初は馬鹿にされていたが、それは尊敬のまなざしに変わった。
徐々にカルマのまわりに人が集まりだしたのだ。
カルマはいつの間にか英雄と呼ばれるようになっていた。
その頃にはカルマを殺す使命などどうでもよくなっていた。
まあ、時々組織からの催促もあるので、暗殺のふりはしていた。
しかし、本当にカルマを殺そうとは思わなくなった。
プロ失格だ。
逆に俺はカルマを守る側に回っていた。
俺はカルマと一緒に旅をすることが多くなっていた。
その中で俺はいろいろなことを学んだ。
俺はある意味エリートだった。
幼いころから人を殺す以外のことはなにも教えられていなかった。
俺は人間について何もしらなかった。
誰もが生まれて苦楽を経験して死んでいく。
そして、死を悲しむものがいる。
いつの間にか、俺にはカルマ暗殺の指令は届かなくなった。
そればかりか、俺に暗殺者が向けられるようになったのだ。
未熟な暗殺者に俺を殺すことなんてできなかった。
俺は暗殺者をすぐに殺すのではなく、彼らに問う。
「なあ、暗殺者なんてやめねえか」
だれもYESと答えるものはなかった。
YESと答えてもただ俺を油断させるための嘘にすぎなかった。
今回もカルマを守ってやる。
カルマはこの時代に必要な人間だ。
それに、俺とカルマが組んで負けたことはない。
今回も同じだ。
それには俺は以前の殺人機械に戻る必要がある。
しかし、以前とは違うところがある。
大切なものを守るために殺すのだ。
カルマと俺は森を駆ける。
カルマの頭の上にはニャニャーが乗っている。
俺にとって本陣に忍び込むのは簡単なことだ。
俺たちの前に厳重に警備をされた天幕が現れる。
おれとカルマはそれを木の上から見下ろすのだった。