暗殺者アイザック01
へんなやつ。
俺のカルマの第一印象はそうだった。
カルマは最初から俺たちと違っていた。
俺たち暗殺者に必要なことってわかるかい。
それはな。考え方だ。
ひとを殺すことをビジネスととらえること。
それだけでいい。 強さとか速さとか魔力とか。
そんなの二の次だ。
いくら強くても、どこかに隙があるものだ。
俺たちは笑って近づいて、喉を掻っ切ればいい。
ただ、それだけだ。
腕力なんか必要ない。
女、子供、老人にもできる仕事だ。
しかし、それが難しい。
普通の人間には、そこに不自然さが現れる。
武の達人はそこを見切ってしまう。
この道に入ってくる者は食い詰めたものが多い。
人生に敗れたもの、そいつらがこの世界に入ってくる。
しかし、ものになるものは少ない。
実際、ほかのこともできない奴に暗殺なんてできるわけがないのだ。
つぎにサイコパス。
殺しに快楽を見出すやつ。
こいつらも使えねえ。
殺すことに楽しみを感じるやつら。
こいつらは眉ひとつ動かさずに人を殺すことができる。
しかし、一撃では殺さない。
相手をいたぶってから殺すのだ。
それから、自己顕示欲も高い。
自分の仕事を芸術とでも思っているのだろう。
明らかに自分化がやったという証拠を残すのだ。
死体の同じ一部分を切り取るやつ、死体にナイフでサインをするやつ、顔をズタズタに切り刻むやつ。
ばかなやつらだ。
たいがいは正体がばれて、殺される。
そして、おれたちのような殺人機械。
小さいころにさらわれたり、売られたりした者たち。
殺人のエリート教育が施されたマシーン。
俺たちは無駄なことはしないし、人を殺しても何も思わない。
ビジネスだからだ。
屠畜場で家畜を殺す者。
それと全く同じなのだ。
カルマはそのどれとも違っていた。
最初は食い詰めた冒険者のように見えた。
ただ、その力は本物だった。
この世界には普通の冒険者は入ってこない。
冒険者は金以上に名誉を重んじるからだ。
AランクだSランクだといったつまらないものに命を張る。
ばかなやつらだ。