吟遊詩人シキブ02
カルマさんはすごく強くてイケメン。
でも、その目はあまりにも哀しかった。
たぶん、ここに来るまでにいろいろな物語を紡いできたんだろう。
あのバーミリオンの英雄神官アキヒロを殺したのはカルマさんだという噂もあるのだった。
わたしも、カルマさんに聞いてみたのだが、答えてくれなかった。
でも、神官アキヒロにあったことはあるみたいで、そのことは教えてくれた。
なんでも、ブサイクでバカでキモイ人だったらしい。
その話をするとき、カルマさんはお酒をあおって、泣きそうな目をするんだ。
いつか、その話を聞いてサーガにしたいものです。
だけど、カルマさんの魅力はそんなものではありません。
カルマさんの周りには危険が集まるのです。
それから、それ以上に人が集まるのです。
神官アキヒロの話も知りたいけど、それ以上にカルマさんの生きざま自体が英雄伝説となるのです。
弱いもの、虐げられているものを助ける。
そのためには自分の死さえ厭わない。
その生き方は巷にいわれるどんな聖人の物語より尊いと思いました。
だから、カルマさんは聖剣士と呼ばれているのです。
カルマさんが助けるのは貴族や王族ではなく、普通の人々。
だから、その戦いは地味で語られることはなかった。
でも、そんなことはない。
カルマさんの物語こそ語られなければならないのです。
わたしの生きてきた意味はここにあるのではないでしょうか。
それで、わたしはカルマさんを追いかけるようになったのです。
わたしの力はカルマさんを守るのにも丁度いいものです。
放っておくとカルマさんは危険なことをしてしまいます。
でも、わたしが近くにいることで、少しでも危険を減らすことが出来ればいいのです。
それにしても、ダメなのは。
メアリーという魔法使いが最近カルマさんに近づいているのです。
カルマさんは相手にしていないのに、べたべたとくっついて、よくないのです。
胸の大きな人にいい人はいないと思うのです。
もし、あんなのとくっついてしまうと、カルマさんは堕落するのです。
せっかく、サーガになりそうな聖人なのに、スキャンダルはダメなのです。
だからそういう意味でもわたしはカルマさんを守らないとだめなのです。
カルマさんはやさしいから断ることもできないのです。
おじさんといってもすごいイケメンだしあの哀しそうな目が哀愁を誘うのです。
なんか守りたくなるっていうか。
そういうのです。
できれば、わたしみたいな真面目な子と一緒になって、静かに暮らすのがいいんだと思うんですけど、
世界がまだそれを許してくれないのです。
カルマさんのところにはいろいろな厄介ごとが集まってくるのです。
それは英雄の条件なのかもしれないけど、なにもカルマさんがそれを解決する必要もないと思うのです。
さて、この前はうまいこといったけど、次はどうでしょうか。
わたしの居場所はわからないようにするというのが手らしいです。
攻撃は跳ね返されるのだから、わたしのいる部分を攻撃できないのです。
だから、村は守られるというのです。
だけど、わたしが守りたいのは村ではなくカルマさんなのです。
わたしは2択になったときは迷わずカルマさんを守ります。
わたしはそういう思いを込めて決戦の準備をはじめるのでした。