エリル教修道士ベルツ04
教会に何が起こったかは、信者のひとりが教えてくれました。
やっぱりギャングの一味が武装して教会に乗り込んだらしいです。
30人くらいいてたみたいです。
それは、この町最大のギャング、ゴードン一味だったということです。
やつらは、正体を隠すこともなく、教会に押し入ったのです。
いや、わざと正体を明かしていたのかもしれません。
彼らにとってはこれはパフォーマンスやったんです。
ゴードン一味に逆らったらこうなるんやっていうのを見せつけたかったんやろな。
そして、たぶんわてが殴り込むのもわかってるんやろ。
各地から構成員を集めたり、傭兵を雇ったりして準備しているらしい。
冒険者ギルドはギャングからの依頼は受けないようになっている。
しかし、スラムには闇の職業あっせんはなんぼでもあります。
それに、表の戦力より裏の戦力のほうがやばいやつがいてます。
強さだけやったら上級冒険者のほうが上です。
しかし、裏には殺しの技術に長けた魑魅魍魎がゴロゴロいるということです。
人の油断に乗じる老婆や子供の暗殺者、毒を使う料理人。
まあ、勝てる可能性はほとんどないってことですわ。
それでも、わてはギャングのとこに乗り込むしかなかった。
もし、わてが子供たちを匿わんかったら、あの子らは死ぬことはなかったんやないか。
あの子らを殺したんはわてやあらへんか、そんな風にも考えるようになったんです。
わては一人、ギャングの本拠の前にたっていました。
もちろん、相棒の錫杖を手に。
たぶん、わても死ぬやろう。
まあ、ひとりでも多く道連れにしてやる。
そんな気持ちでした。
その肩をポンとたたかれました。
振り返るとカルマはんが笑っていました。
「俺も付き合うぜ。
あんたの八つ当たりにな」
「死ぬかもしれまへんで」
「望むところだ」
そう言ってカルマはんはわての横に立ちました。
もう、わてらはギャングに見つかってました。
ほんまアホです。
白昼堂々正面からいくなんて。
ギャングの方も何か動いてます。
そして、四五人の戦士がこっちに向かって歩いて来ました。
たぶん、腕に覚えのある傭兵でしょう。
「おまえら、何をしに来た」
敵の一人が吠えます。
「行きますか」
わてとカルマはんは目を合して、奴らに向かって走り出しました。