エリル教修道士ベルツ03
そのクエストで一緒になったのが、カルマはんでした。
すごい無口な人で、なんていいますか、教会のどんなえらい人より聖人に見える人でした。
盗賊の討伐のクエストでしたが、カルマはんの剣技はとにかくすごいもんでした。
報酬はいいがかなり分の悪い仕事でした。
貴族は軍を出すのではなく金だけ出したんですな。
それでも、カルマはんが手を上げるまでは誰も受けようとはしませんでした。
結局、10人で受けることになったのです。
敵の砦での戦いはあっさりと終わりました。
普通、攻城戦は時間がかかるもんでしたが、わてらは少ない人数にも関わらず正面突破を選びました。
敵の砦の門をカルマはんが一刀両断。
そこから砦になだれ込みました。
敵の半分はカルマはんが倒しました。
ほんまにほれぼれするような戦いっぷりでした。
パーティは楽勝でミッションを遂行することとなりました。
わても10人くらいは倒しました。
たぶん、カルマはんの次くらいでしょうか。
その中でわてはカルマはんと話すようになりました。
わてが孤児院のことを話すとカルマはんは今回の自分の取り分をわてに押し付けてきました。
「子供たちのために使ってくれ」
そう言ってカルマはんは微笑みました。
わてはカルマはんに孤児院を見てもらおうと、いっしょに戻ったのです。
そこには目をふさぐような光景が展開されていました。
一週間も離れたわけやありません。
それなのに、教会は廃墟のようになっていました。
そして、白い壁は血しぶきで赤く塗られていました。
幼い子供たちの死体があらゆるところに転がっていました。
みんな苦悶の表情を浮かべていました。
たぶん、残忍な殺され方をしたんやろな。
しんどかったやろな。痛かったやろな。
年長の子は戦ったんでっしゃろな。
そやけど、大人には敵わんかったんやろ。
手足を斬られて殺されてました。
無念やったんやろな。
まさ地獄でした。
わての目から、いつの間にか涙がこぼれておりました。
その肩にカルマはんが手を置きました。
「カルマはん。
すんまへん。わてには何もできまへんでしたわ」
そう言ってカルマはんからもらった寄付の袋を渡そうとしました。
カルマはんは何もいわんと、わてをじっと見てるだけでした。
その目は哀しみに満ちていて、まるで神さんの目のようでした。
わては声を出して泣きました。
そして涙も枯れたころ、わては呟きました。
「教会をこんなにしたらあきまへん。
絶対、神さんの罰があたりますわ」
わての呟きにカルマはんは静かにうなずかはりました。