エリル教修道士ベルツ01
カルマはんはもう動かはったみたいですな。
たぶんアイザックと敵の頭を倒しにいったんでっしゃろ。
こっちはわてらに任せてもらいましょ。
わてがここを守ってみせまっさ。
カルマはんが頭目を倒すまで、ここを守るだけです。
たいして難しいことやおまへん。
カルマはんには恩があります。
今、それを返すときです。
わては昔すごいやんちゃをしてました。
エリル教の孤児院で育って、回復魔法の才能を見出され僧侶となったんですが。
わてはどっちかっていうと戦闘のほうが好きでした。
エリル教には独特の拳法があり、そっちのほうが性に合ってました。
拳法といっても、棒術が得意で免許皆伝となりました。
成人するとエリル教を布教して回るという口実で世界を旅することとなりました。
冒険者のパーティに回復要員として紛れ込みいろいろな国を回りました。
もちろん、わては下手な戦士より戦える回復要員として重宝されることとなりました。
僧侶といっても、無頼を気取って酒女博打にはまり生臭坊主と呼ばれるようになっていました。
一応わてもエリル教に帰依した身、自分勝手な生き方をずっと続けるわけにもいかなくなりました。
とある町の教会を任されることとなったのです。
その教会はスラムにあり治安の悪いことから、わてのような武闘派が派遣されることとなったんです。
その地域は暗黒組織の勢力が強い地でもありました。
最初、あんまりやる気もなく、形だけのミサを行うだけの司祭をでした。
でもその町には孤児がたくさんいて、わてはそいつらとふれあうようになりました。
自分も孤児院育ちやから、子供たちと自分を重ねあわせていたんでしょうな。
孤児院の状況はわての育った環境より酷く、子供たちは大人たちに命じられて窃盗や物乞いをさせられてました。
それで最低限のものを得て生きるのが精一杯でした。
運よく生き延びたところで奴隷として売られるといった具合で、将来もない絶望的な境遇でした。
わては、エリル教に帰依しているといっても、そんなに教義に詳しいといったわけやありません。
しかし、わてはこの子たちを守らなあかんと思いました。
わては難しいことはわかりまへん。
教会のえらいひとらはなんか貴族とかに免罪符とか売りつけてはりました。
それを持ってたら天国に行けるってお守りですな。
それに反して聖人ニコラスとか言う人が、新教とかいうのを立ち上げたらしいです。
まあ、教会の内部でもいろいろ権力争いなんかもあって、ややこしいことになってました。
しかし、わてにはそんなことは関係ありません。
ただ、目の前で子供たちは虐げられるのは違うと思いました。
とくにスラムのギャング団のやり方は酷いものでした。
体力のある子供には、過酷なスリのノルマを課し、出来なければ酷い罰を与えてました。
そして、スリのできない子供には物乞いをさせるといった具合で、憐みを増すため、子供の手足を切り落とすなんてこともしてたみたいです。
わては教会の開いた部屋へ子供たちを匿うようにしました。
スラムの小さな教会は、急造の孤児院になったのです。