剣士ケント04
カルマさんの表情が変わり、割れた盗賊たちの間を駆けだす。
もう、カルマさんに攻撃しようという盗賊はいない。
カルマさんの表情は変わっている。
たぶん、手下を盾にして逃げようという頭目に対する怒りだろう。
そのカルマさんに盗賊は怯むしかない。
そして、そのカルマさんと戦ってまで頭目に義理を尽くそうという者もいないのだった。
カルマさんの動きは速い。
その足運びはまるで忍者のよう、足音も立てずに柔らかく走る。
体重がなくなったような軽い走りだ。
一方、頭目は巨体、暴飲暴食を繰り返しただらしない身体をしている。
すぐに息が切れて追いつかれる。
「な、旦那、許してくれ。
もう、しないから。
こころを入れ替えるから」
両手を合わせてカルマさんを拝む。
カルマさんは手をとめて、頭目を見下ろす。
だめだ、そいつを許したら。
絶対に心を入れ替えたりしない。
「わかった殺しはしない」
そう言って、剣を一閃させる。
頭目の両腕が落ちる。
その鋭さは骨まで綺麗に落とされている。
それも、カルマさんの刀はそんな業物に見えない。
ただ、カルマさんの剣技のみで切断したのだ。
盗賊は退治され、町は平和になった。
そして、俺はカルマさんに弟子入りすることを決めた。
カルマさんに土下座して頼んだのだが、弟子はとらないと断られた。
でも、俺には兄貴の剣以外考えられない。
それから、兄貴に付きまとうこととなった。
弟子にはなれなかったが、練習を一緒にするのは許してもらえるようになった。
それで、俺の才能も開花した。
確かに町道場でも天才と呼ばれた時期はあった。
兄貴の指導を得て俺の剣は実践の剣となった。
特に兄貴に学んだのは身体の動かし方。
特に剣術を学んだ人間はその型に固執する。
そこを崩してやれば、簡単に斬れる。
比べて俺たちは型をもたない。
どんな形からも攻撃ができる。
身体を崩されても、そこから手を出すことができるのだ。
俺の剣は飛燕剣と呼ばれるようになった。
兄貴のように、自然に動くことはできないがジャンプを使うことで、相手の体を崩すことができるようになった。
見た目は兄貴の剣と対照的に派手な剣だが、根幹は同じなのだ。
俺は飛燕のケントと呼ばれる一端の剣士となった。
そして、まだ兄貴に付きまとっている。
まだ、兄貴に学ぶものは多い、それに兄貴は死地に向かいすぎる。
いつか俺もあの時助けてもらった恩を返す。
そして、今がその時だ。
俺は聖剣士カルマ一番弟子、飛燕のケントなのだ。