剣士ケント01
やっぱカルマの兄貴はカッケエわ。
1000人の敵に一人で挑もうなんてな。
いくら兄貴でもこれは勝ち目のない戦い。
でもさ。一番弟子としてはついていく一択しょ。
俺がカルマの兄貴にあったのは一年前。
俺の育った町にごろつきがいてさ。
なんか弱いものいじめばっかしてるわけ。
それで、俺がしめてやろうとしたんだけど、相手は20人もいてさ。
二三人倒したところで、やられちゃってかたにはめられそうになっているところに兄貴が来たんだ。
なんか、娘をさらわれた親にたのまれてって。
俺もこの世界の人間。
子供はみんな剣士にあこがれる。
俺も子供のころから剣を振って育った。
もちろん、俺のような町人でも稽古をつけてもらうことはできる。
ガキの頃に読み書き計算と剣を習うのだ。
その中でも俺は才能があると言われていた。
それで、俺は剣士を目指すこととなったのだ。
いつしか師範代となり、町ではおれにかなうものはいなくなった。
その俺が二三人しか倒せなかった。
その盗賊団は明らかに町のごろつきレベルではなかった。
ひとりひとりが町で一番というレベルなんだろう。
俺を倒した剣士は、余裕で俺を倒した。
それも俺が生きているということは、とんでもない力量の差があるということだ。
俺のような町道場レベルではないのだ。
それがまだ10人くらいはいるレベルの盗賊団。
カルマさんはそのアジトにひとりで乗り込んできたのだ。
カルマさんのことは町にきたときから知っていた。
すごい無口で、町のチンピラがちょっかいをかけても、笑っているだけ。
噂では危険な戦場を渡り歩く死にたがりといわれる冒険者らしいが、その片鱗もない。
いつしか、その噂は眉唾でカルマさんはただの臆病者だと言われていた。
でも、カルマさんはそれが耳に入っても、笑っているだけだった。
毎日、ギルドで仕事をチェックして、簡単な採集クエストを受けるだけ。
それで小銭を稼いで生活をしていた。
もう、この町は終わりだ。
そう思った時、カルマさんは一人で盗賊のアジトに乗り込んできたのだ。
剣を肩に担ぐような構えで、俺の前に立っていた。
「こいつは、例の臆病者のカルマってやつです」
「構えも隙だらけだ。本当にこいつが例の死にたがりかよ」
盗賊団はそう言ってカルマさんを囲む。
「じゃあ、殺りあおうか」
カルマさんは、そう言って目を見開く。
そのとたん、すごい殺気がカルマさんを包む。
いままで、この人がこんな顔をするとは想像すらできなかった。
まるで、別人といえるくらいの変貌だった。