聖剣士カルマ31
「なあ、猫ニャン。
この村は今、黒蠍革命団っていうのに狙われているんだ」
言葉も治ったようだ。
そして、村長の家を貸してもらって、猫ニャンを説得している。
「ラーニャだにゃん」
「それでは、ラーニャ。
俺はこの村を救いたいんだ。
革命とか言ってるが、やつらは山賊団にすぎないんだ。
本当に世界を良くしたいのだったら、この村を襲う必要なんてないだろう。
だから、この通りだ。
革命団を退けるまで待ってくれないか」
俺はテーブルに頭をつける。
ラーニャは何も言わずに机の上の焼き菓子を食べている。
この村に伝わるお菓子みたいで、なかなか美味い。
村長の奥さんが焼いてくれたのだが、猫に何を出したらいいかわからなかったので、とりあえず出してもらったのだ。
本当は魚とか肉がよかったのだろうか。
ラーニャは黙々と食べている。
そろそろ、なくなりそうで、俺の目の前のにもチラチラと視線を送る。
「それに、この戦は分の悪い戦いだ。
勝てる可能性は皆無とはいわないが、かなり低いと思って間違いない。
おまえが、俺を殺さなくても、革命団が俺を殺してくれるかもしれない」
ラーニャは自分のケーキを食べ終えて、ぺろぺろと皿を舐める。
気に入ったみたいだ。
甘さ控え目なので子供向きではないと思っていたが、大丈夫だった。
俺は自分の前のお菓子をラーニャのほうに押しやる。
ラーニャは、2つ目のお菓子にとりかかる。
もう、フォークを使うのもどかしいのか、猫食いになっている。
おいしいのを表すように三角の耳がピクピクと動く。
「それでも、生き延びたら。
この町を救えたら、思い残すことはない。
その時には、この首、おまえにくれてやる」
ラーニャは、目を閉じて、ケーキを味わう。
幸せそうな顔をしている。
「だから、俺にすこし時間をくれ。
別に逃げたり隠れたりはしない。
なあ、俺の命、もう少し預けてくれないか」
俺は猫ニャンを見る。
そう、たぶん、おとなしくしているところから、待ってくれると思う。
説得成功だろうか。
猫ニャンは静かに目を開ける。
そしておもむろに口を開く。
大丈夫だろう。
「おかわりにゃん」
ミーニャは俺をみて言う。
たぶん、こいつは俺の言ったことを全然聞いていないのだった。