聖剣士カルマ01
「兄貴、おはようございます」
俺が冒険者ギルドに入ると、一人の若者が近寄ってくる。
ケントという剣士だ。
若者というより少年、たぶん高校生くらいだろう。
何かと俺になついてくる。
まるで犬みたいに。
時々、後ろでパタパタと尻尾を振っているのが見えるような気がする。
まあ、気のせいだが。
最初は上級ランクの俺に挑戦してきた冒険者だった。
俺は片手でハンデ戦をしてやったんだが、まったく試合にもならなかった。
剣の筋は悪くないのだが、圧倒的に経験が足りない。
剣が直線的過ぎるのだ。
それ以来、弟子入り志願に付きまとっているのだ。
俺は弟子などとる気はない。
俺の剣は我流、自分の身体に合わせて編み出しもの。
決まった型もない。
水のように変幻自在、風のように自由な剣だ。
剛であり柔である。
これは、最近身に付いたもので、言葉で説明できるものではない。
「今日はどの依頼を受けるんですか?
トロールの討伐なんかどうですか?
それともダンジョン攻略ですか?
今度は俺も連れて行ってくださいよ。
絶対、役にたちますから、兄貴のパーティに入れてくださいよ」
ケントは俺から離れない。
次の依頼か。
別に平和に暮らしている魔獣を無理に倒す必要はない。
それから、ダンジョンも町の近くでなければ人間に害はない。
もっと他の依頼だ。
ケントに手渡された依頼の紙をテーブルに戻す。
「ケントはん。
あきまへんで。
コスモはんについていくのはワテでっせ。
なあ、コスモはん。
なんか、ええ金もうけの話があるんでっしゃろ。
今度はワテも一枚かませてもらいますわ」
方言のきついデブのスキンヘッドはベルツだ。
エリル教の僧侶といっても生臭坊主だ。
金のことしか頭にない。
しかし、腕は確かだ。
一度一緒に仕事をしたことがあるが、回復魔法はもちろん、戦闘力もある。
こいつの錫杖は黒鋼で、普通持ち上げるのがやっとという重さ。
それを操り、並みの剣士以上に戦える前衛なのだ。
「おれの受けるのは、危険な依頼だ。
そんなに儲けにはならない」
俺はベルツを一瞥もせずに、仕事を探すのだった。