御子神蒼生24
「はい、喜んで」
ぼくは、戸惑いながらもそう返事をする。
すごく嬉しいけど、なんか変な感じ。
ぼくはもうそんな感情はないと思っていたから。
初瀬さんになんか、ぼくはふさわしくないと思っていたから。
そのあといろいろな話をした。
初瀬さんは今日ぼくから大事な話があるって聞いてたから告白されると思っていたみたいだ。
それなのに、あんな話になってしまって。
相当ずっこけたみたいだ。
なんか、変だなと思っていたんだけど、こういうことだった。
それで、初瀬さんからの告白となったんだけど、ぼくはきちんと説明した。
僕なんか初瀬さんにふさわしくないと思っていたこと。
もうそんなこと考えてはいけないと思っていたこと。
それから、忙しい日が始まった。
カフェを出すところを探したり、思ったよりいろいろ考えないとならなかった。
もちろん、初瀬さんと会うことも大切だ。
社長の奥さんも協力してくれることとなった。
ノウハウを教えてもらえるのだ。
資金提供も言われたけど、それはお断りさせてもらった。
この仕事は自分の責任でやりたいから。
郊外の病院の跡地を紹介してもらえることとなった。
これは社長の関係で探してもらえたのだ。
かなり広いんだけど、猫たちにのびのびしてもらえるかなと思って。
それと資金も十分にあったし。
資金面では、設備投資でぼくの資産の1/10までと決めた。
普通なら初期投資はもっと膨れ上がりそうなんだけど、ぼくの目的は猫カフェを作ることよりも猫を救うこと。
最初受け入れる予定の100匹が死ぬまで面倒を見れることが目的なのだ。
それで、建物はそのままにして、内装に力をいれることにした。
当初カフェは一階の一部だけにして、残りは事務所や猫部屋とした。
もちろんぼくたちの居住スペースも作った。
初瀬さんとぼくは開店準備に走り回ることとなった。
その間にいろいろ協力してくれる人ができた。
みんな猫好きな人ばっかりで、すごく親身になってくれた。
芸術大学の学生が安く外装をデザインしてくれたりもした。
あと、開店までのドキュメンタリーを作ってくれることとなった。
これは、前のNPOに取材に来てくれたテレビの人が話を持ってきてくれたのだ。
助けるとかじゃなくて、今は猫の番組は視聴率が取れるらしい。
ぼくたちの猫カフェは全国に知られることとなる。
でも、一番協力をしてくれたのは猫たちだ。
まだ、塗りたてのペンキの匂いもする猫部屋にすぐに慣れてくれたのだ。
アルバイトも3人雇って、開店に備える。
男の子が1人と女の子が2人。
もちろん猫好きの子たちだ。
ぼくたちが多忙な日を過ごす中、あっという間に開店の日となった。