御子神蒼生15
「ぼくの財産ですか?」
「そうです。仮想コイン。覚えていますよね」
「あの詐欺にあったやつですか。
ニャンコインでしたよね」
思い出したくもないことだった。
ぼくはすべての財産をマネーの達人のいうとおりに仮想コインにつぎ込んだのだ。
それも借金までして。
それが詐欺だってネットでわかって。
その借金の処理のために自己破産までしてしまったんだ。
「ええ、そうです。
NFTってご存じですか。
非代替性トークンっていうんですが、これからの時代はNFTの時代が来るって言われています。
お金も政府の作ったものでなく、NFTにとって変わられると言われています。
NFTのマネー版は暗号資産、つまり仮想通貨です。
蒼生さんが購入したあと、仮想通貨は盗難騒ぎもあり大きく下落しました。
盗難分は取引所を経営している会社が補填することになりましたが、仮想通貨は危険と判断され、みんな投げ売りすることとなりました。
ニャンコインもその過程で下がりタダ同然になってしまいました。
それが、マネーの達人の詐欺騒ぎとなったのですが、ニャンコイン自体はちゃんと存在する仮想通貨でした。
あなたはきちんと取引所を通じて仮想通貨を買っていたのです。
そして、あなたはそれを放置したのです。
他の人はだいたい投げ売りしてわずかなお金を手に入れる道を選びました」
そうなんだ。あれは少しでもお金になったんだ。
でも、そのあと異世界にいたからそんなことはわからなかった。
「そのあとフェイスブックが仮想通貨を作るというニュースもあって、再び仮想通貨が注目されることになったのです。
仮想通貨は軒並み大暴騰することになりました。
その中でもニャンコインは過去に盗難に合わなかったこともあり、信頼性が高いといわれました。
それで、仮想通貨の中でも特に大きく上がったのです。
今では、御子神さんが買われたときの100倍以上になっています」
まさか。そんなこと。
たしか2000万以上はつぎ込んだはず。
そしたら20億とかそういうこと。
「それで」
声が震える。
「ええ、借金を返しても相当の財産が残ることになります。
御子神さんは億万長者になられたのです。
その処理を私の事務所でやらせてください。
手数料はいただきますが、きちんとやらせていただきます」
「はい。考えてみます。
少し時間をください」
いきなりそんなことを言われても信じられないよ。
「では、お気持ちがまとまりましたら、こちらに連絡ください」
弁護士はそう言って名刺を差し出す。
その横でよかったねっていうようにハナがニャーと鳴くのだった。