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猫にひかれて異世界生活 みじかい尻尾  作者: PYON
第二話 御子神蒼生の話
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御子神蒼生13

 この生活になってわかったことがある。

 それは、ぼくたちが必要なものってあまり多くないということだ。

 どういうことかっていうと。

 ゲームやSNS、テレビのワイドショー、そういうものはほとんど必要ないってこと。

 いや、ちがうな。

 むしろ害悪っていったほうがいいのかもしれないな。


 ひきこもっていた頃のぼくは憑かれたように情報を追い求めていた。

 ネットで配信される粗悪な情報、それを毎日追いかけていた。

 自分をその場所から救い出してくれる情報がどこかにあるかもしれない。

 それを見逃さないため、毎日ネットをチェックしてた。

 そこに書いてあるのは粗悪な情報ばかり。

 芸能人の不倫、政治家や企業の不祥事。

 そういった情報に心を乱されていた。

 そういうやつらがいるからぼくは落ちぶれている、本気でそう思っていた。

 自分は悪くない、世の中が悪いんだって。

 怒りながら誹謗中傷を書き込む。

 ぼくにとってなんの意味もないのにね。


 中には悪いことをしている人もいるけど、大半は幸せなだけの人。

 そう幸せにしている人が許せなかったのだ。

 そういう人たちのSNSの言葉尻を捉え炎上させる。

 ざまあと思うけど、心底すっきりしていない。

 自分がどんどん病んでいくだけだった。

 そして、自分の存在感を確かめるためにゲームの中に逃げ込む。

 それは課金と時間だけあれば最強になれるものだった。


 そして向こうの世界に転移したが、同じことだった。

 ぼくは決して満たされることはなかった。


 そして今の自分。

 最低限の家具と電化製品、数冊の本とテレビにスマホ。

 ぼくの所有するのはそれくらいだ。


 でも、すごく満たされている。

 仕事が終わって、食事をして、お風呂に入って、ハナのお世話をするだけ。

 夜はゆっくりとした時間が流れる。

 ハナをじっとみているだけで、あきることがない。

 以前のぼくはこんな気持ちになることなんてなかった。


 今日の休みもハナと一緒にゆっくりしている。

 膝にハナを置いて本を読んでいるのだ。

 ハナは時々邪魔をする。

 そうしたら、ハナの頭を撫でてなだめる。

 それだけで、幸せを感じるのだ。


 その時、インターフォンが鳴る。

 宗教の勧誘とかセールスかな。

 ぼくのところに来るのはそんなものだ。

 

「はい」

 ぼくはドアのところに行って返事をする。


「御子神蒼生さんですよね。

 弁護士の野田です」

 ドアの外の人はぼくにそう告げるのだった。


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